2017年度活動レポート(一般公募コース)第170号
NARA SAKURA Science Camp 2017を実施
奈良女子大学附属中等教育学校からの報告
NARA SAKURA Science Campは、アジア6か国の高校生が共に学ぶ科学技術のワークショップを実施する、3年計画のサイエンスキャンプです。さまざまな文化的背景を持つ生徒達が協働して、英語で科学の課題を探究し、国際的な場で活躍するために必要な、論理的思考や議論・表現する能力を育成することを目的としています。
2年目の本年は、8月31日(木)から9月9日(土)の日程で実施しました。
本年は、インドネシアの国立第10サマリンダ高校、台湾の国立中山大学附属國光高級中学校、ベトナムのベトナム国家大学ハノイ校自然科学大学附属英才高校、韓国の世宗科学芸術英才高校、ウズベキスタンのタシケント工科大学附属第1アカデミー学校から高校生21名と引率教員5名の参加がありました。
そのうち、ベトナム、ウズベキスタンの9名の高校生と2名の引率教員は、さくらサイエンスプログラムの支援による招へいでした。また、本校からの参加生徒は、20名でした。
国際交流の面では、初日のアイスブレイクを目的とした「世界遺産ツアー」で、奈良に到着した国から順に本校生徒と市内を散策し、東大寺や興福寺の日本の古建築を見学し、その後、本校にて学校紹介や文化交流などを行い、翌日のプロラグラムに向けて生徒同士が親睦を深めました。
世界遺産ツアー
また週末には、2泊3日のホームステイを実施し、日本の一般家庭での生活を体験しました。
科学技術ワークショップ(3日間)では、2つのグループに分かれて、下記講座を実施しました。
◆講座A「How to distinguish close related RNAs and DNAs」(奈良女子大学 渡邊教授)
◆講座B「Mathematics applied to biology」(奈良女子大学 高須教授)
講座Aでは、DNA鑑定の手法を体験的に学ぶことをテーマに、DNA抽出とRNA抽出、そしてそれぞれを鋳型として同じ遺伝子の塩基配列の増幅を行うことを通して、RNAとDNAの構造的違いを考察し、その後、実験手法とその結果についてディスカッションを行いました。
科学技術ワークショップA講座【RNA, DNAの抽出】
講座Bでは、生物の個体数の変化を数式化し、得られた数式モデルをコンピュータによりシミュレーションして考察するなかで、「さまざまな要因をどのように数式に反映させるのか」、「数式モデルを作る際にはどの要因を反映させるのか」について生徒たちがディスカッションを行い、各班の考察についてプレゼンテーションを行いました。
科学技術ワークショップB講座【生物の個体変化をコンピュータでシミュレーション】
研究施設訪問では、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の協力の下、3グループに分かれて、研究室を見学しました。
①情報科学研究科インタラクティブメディア設計学研究室(武富助教)、
②物質創成科学研究科マテリアルズ・インフォマティクス研究室(畑中特任准教授)、
③バイオシステム研究科植物二次代謝研究室(峠准教授)
各研究室では、講義を受けた後に積極的な質疑を行いました。
研究室訪問【奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)】
また、本年度からの新たな取り組みとして、問題解決型ワークショップ「課題:時を刻む装置を作る」を行いました。これはものづくりを通して、協力して課題解決を行うもので、生徒は限られた材料を用いて測定方法や測定精度を向上させるためのアイデアを出し合い、自分たちで1秒単位の時間を測る実験装置を作成し、発表を行いました。
問題解決型ワークショップ「課題:時を刻む装置を作る」
その後、奈良女子大学の宮林教授から、作品の講評とともに、物理学における実験的検証の意義についての講義を受けました。
9日間という短期間ではありましたが、科学に対する意欲が高いアジアの高校生が集まり、共通の課題に取り組み議論することにより、考え方や取り組み方の違いを認識する有意義な機会となりました。