2017年度活動レポート(一般公募コース)第163号
中国科学院修士課程の学生が、次世代ゲノム編集技術を習得する
名城大学からの報告
名城大学農学部生物資源学科・遺伝育種学研究室(寺田理枝教授)では、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、平成29年7月30日から8月7日までの9日間、中国科学院上海植物逆境生物学研究中心の修士課程の学生1名を招へいしました。
2050年には現在の食糧の1.6倍が必要と試算され、大規模な食糧不足が予測されています。問題解決策の一つとして、ゲノム編集技術を使った植物の利用が有力ですが、その前提として、社会に受け入れられやすい新規ゲノム編集技術の開発と、それによる植物育種の実現が急務と考えられています。
寺田研究室は、相同組み換えを介したイネの遺伝子ターゲティングを確立し、ノックインや高精度塩基置換を実現した、次世代ゲノム編集技術を開発しました。
本課題では、このゲノム編集技術をさらに発展させ、遺伝子組換えの痕跡を一切残さず、迅速かつ安全に標的遺伝子を改変できる新規ゲノム技術の確立と実用化を進めることを目的としています。具体的には、中国科学院修士課程の学生が寺田研究室に滞在し、次世代ゲノム編集技術を習得し、中国でその技術を立ち上げ、有用性と安全を中国科学院で検証します。
初登校日となる7月31日には、入念な研究打ち合わせを行いました。特に、寺田教授による詳細なイネ形質転換のプロトコールの確認は、招へい学生にとって非常に貴重な体験となったようです。また、日本人学生の案内のもと名城大学の施設を見学しました。
8月1日~4日は、実際に大規模イネ形質転換の実験技術の取得を行いました。小規模な形質転換とは異なり、ダイナミックな実験手法に、中国科学院の学生は驚いたようでした。また、実験中には、試薬や機材の型番まで詳細にメモしており、実験に対する真剣さが伺えました。初めは、英語でコミュニケーションを取ることを躊躇していた日本人の学生も、次第に打ち解け合い、お互いに十分にコミュニケーションができるようになりました。
8月5日は、大きなコンサートが開催されるため、名古屋に宿泊できるホテルがなくなるというアクシデントがあり、大阪を訪れることとなりました。短い時間でしたが、日本の文化に触れることができたようです。御堂筋界隈を視察しましたが、非常に人が多く、中国科学院の学生は少し疲れたようでした。
8月6日は、学外のゲノム編集の研究者を招へいし、今後の研究の方向性のディスカッションを行いました。その後、中国科学院の学生の研究発表を1時間以上にわたり行いました。名城大学の学生からも積極的に英語で質問があり、非常に実りが多い、ディスカッションとなりました。
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えていただいた、さくらサイエンスプログラムにお礼を申し上げます。
実験の様子