2017年度 活動レポート 第152号:九州大学

2017年度活動レポート(一般公募コース)第152号

生活習慣病の予防に向けた日中共同研究を実施

九州大学からの報告

九州大学病院メディカルインフォメーションセンターと同大学持続可能な社会のための決断科学センターでは、2017年9月6日~26日の約3週間、貴州省疾病予防コントロールセンターの慢性疾患予防治療研究所から胡远东(胡遠東)先生を迎えて、共同研究を実施しました。

胡先生は呼吸器科と麻酔科の専門医で、現在では慢性疾患の研究者として国の研究機関に所属して、中国農村部(貴州)における医療資源不足の課題と向き合っておられます。

アジアの開発途上国および中進国では、肥満をはじめとした生活習慣病の有病率が急激に増加して、その対策が求められています。九州大学では久山町住民コホート研究の他、医療用センサーの利用、情報通信技術の応用、小規模健診ビジネスモデルなど様々な分野から予防医療活動を実施しており、胡先生の来日機会に合わせて関連の事業や研究紹介を行い、新たな活動展開の可能性を探ることを目的として、共同研究プログラムを組みました。

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九州大学病院国際医療部による事業紹介の様子(遠隔会議システムの部屋にて)

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日本の予防医療活動や通常提供される医療サービスを紹介し、健康診断を通した予防活動の状況をお伝えしました。九州大学病院の見学に加え、臨床研究中核病院としての各種インバウンドとアウトバウンド活動を、国際医療部の先生方より説明してもらいました。

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QRコードによる支払い方式などが急ピッチで普及している中国の地方農村部において、情報通信システムを利用した可動式健診システムと遠隔診療の導入の可能性を検討してもらいました。実際に研究で使用している可動式健診システムを実際に触れ、健診項目の選択理由や医療センサー機器等について、医療情報工学の専門の先生からご紹介いただきました。

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オールラウンド型リーディング大学院である決断科学プログラムに所属する様々な専攻の大学院生とともに、いくつかのセミナーを行いました。

①システム情報科学府の学生と行ったバングラデシュにおける可動式健診システムと遠隔医療についてのセミナーでは、医療センサーや医師による診療活動を支える情報科学技術に関して理解を深めることが出来ました。

②医療従事者が不足しているインド、カンボジアなど、他の国で取り組んでいる健診事業の導入の状況についても事例紹介として小セミナーを実施しました。

③健診医療システムの導入に必要な人材育成や関連費用確保という実践・運用面も重要のため、ソーシャルビジネスを含めたビジネスモデルに関するセミナーの機会も持ちました。

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大学院生とバングラデシュ移動式健診事業に関するセミナー実施の様子(伊都キャンパス)

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市中の内科系クリニックと、福岡市郊外の久山町住民健診を見学しました。久山町では50年以上も続くコホート集団があり、様々な工夫で住民と町と大学が協力し合って健康モニタリングを続けています。現場の先生方のご協力で実際の健康診断の様子を見学し、また一部は体験して説明を受けることができました。

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久山町の住民健診にて呼吸機能テストを体験している様子

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胡先生より、中国の生活習慣病の状況について講演をしていただく機会を設けました。高齢化や飲酒、肥満など、生活習慣の変化に日本との共通部分がある一方で、疾病パターンには異なる部分もあり、非常に興味深い比較が考えられました。

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胡先生の講演資料「Trends of Lifestyle-related Diseases in China」より抜粋(日中の人口ピラミッド比較)
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胡先生(前列中央)の講義後の集合写真 メディカルインフォメーションセンターと決断科学センターの教員、スタッフ、大学院生とともに

今後の共同研究検討会では、計画時に想定していた以上の情報が得られ、双方ともに有意義な期間となりました。お陰で帰国後も胡先生とメールのやり取りが続いています。

このプログラムを通して、受入れ側の我々も学内外の研究者や留学生の協力が得られ、人的交流と結束が高まりました。この様な機会を頂き、さくらサイエンスプログラムへ心より感謝を申し上げます。