2017年度活動レポート(一般公募コース)第143号
フィリピン大学の学生が、河川管理技術の最先端を学ぶ
首都大学東京からの報告
<はじめに>
アジア諸国では異常気象により水害リスクが高まっており、河川インフラの整備は急務です。そこで、「メガシティーを守る河川管理技術の最先端を学ぶ」として、河川の治水・利水対策や、流域管理のための情報通信システムといったインフラ技術を学び、さらに自然環境や生態系の保全技術、社会経済的な観点からの検討方法なども学ぶプログラムを実施しました。
参加者はフィリピン大学の水資源・土木工学科、セント・ラサール大学の生物・電気・経済学科から2名ずつの合計10名と、教員1名でした。期間は2017年10月24日から11月1日までの9日間でした。
<ラボツアー>
最初の3日間は3分野のラボツアーでした。都市基盤環境コースでは、交通工学、土質工学、橋梁工学、コンクリート工学、海岸工学の各実験室をまわり、学生が実験している様子を見学しつつ装置にも触れました。
生命科学コースでは、ニワトリの卵の胚の観察を行った後に、分子神経科学、動物生態学、植物生理学の各実験室を見学しました。情報通信システムコースでは、レーザーリモートセンシング、ウェブインテリジェンス、ソーシャルビッグデータマイニングなどの研究に触れました。
<フィールドツアー>
フィールドツアーでは、河川・ダムの現場を訪れました。石神井川(東京都)には首都大が水質モニタリング装置を設置しており、塩分・水温計、クロロフィル・濁度計、溶存酸素濃度計を実際に河川から引き上げて、センサー技術を見るとともに、データ回収などのメンテナンスを体験しました。
八ッ場ダム(群馬県)は現在建設中であり、国土交通省のご案内により、巡航RCD工法という最新のコンクリート打設技術を間近に見学しました。下久保ダム(埼玉県)では、水資源機構のご案内により、めったに見る機会が無いダムゲートからの緊急放流を見て、洪水制御技術を実地に学ぶことができました。
<文化体験>
文化体験として、浅草、草津温泉および新宿、渋谷を訪れました。彼らにとって最も印象的だったのは日本の食べ物だったようで、盛り付けや彩り、ヘルシーな調理方法などを気に入り、しきりに写真を撮影していました。引率は首都大生に依頼し、学部2年生から大学院2年生まで幅広い学年層が英語コミュニケーションを楽しみました。
<プログラムの効果>
参加者は、首都大の実験装置や研究環境、シミュレーション用計算機などが充実していることに一様に驚いていました。また、水質測定の実際やダム建設現場、洪水制御などを見たのも初めてであり、非常に満足したようです。
さらに専門以外の分野にも関心を持ち、様々な知識の習得に積極的でした。「私たちは科学研究こそが国家の発展の鍵になり、研究活動と学術交流が新たな可能性を生み出す、ということを学べました」とは参加者のコメントです。
本プログラムを通じて、参加者のほぼ全員が、将来日本に留学したいと考えるようになりました。さらに、首都大生の5名が相手校への留学を決意し、2017年度末に2~6ヶ月の留学をすることとなりました。このように、双方にとって非常に実りのあるプログラムになりました。