2017年度活動レポート(一般公募コース)第114号
静岡の超急峻環境の中で、豊かに暮らすための科学技術を学ぶ
静岡大学理学部からの報告
静岡大学理学部では、さくらサイエンスプログラムのご支援を受け、2017年8月3日~10日の日程で、香港科学技術大学理学院から学部学生7名と教員2名を招へいしました。静岡大学理学部は香港科学技術大学理学院と国際交流協定を締結しており、学生さんの受け入れは今年で2回目です。
静岡大学が所在する静岡県は、100km足らずの距離に日本一高い富士山と日本一深い駿河湾を有する、世界的にも稀な超急峻環境です。これらの地形は現在も変化し続けており、静岡県での暮らしは、地震や火山噴火に備えながら、エネルギ―や生物生産といった山・里・海からの恵みを産業に活用し、更に、頑強な交通インフラで日本の大動脈を支えています。
これらを可能にしている新旧様々な科学技術を「超急峻環境科学」と称し、6つの実習で学びました。台風5号が本州に上陸したため、調査船を使った駿河湾での観測実習を東海大学海洋科学博物館の見学に振り替えたり、台風一過後の記録的猛暑により参加者1名が熱中症で転倒した不運がありましたが、多くの方に助けていただき、全日程を終えることが出来ました。
<山里について学ぶ>
来日翌日の8月4日に富士山と駿河湾に関する講義を受けたのち、山里の自然と暮らしを学ぶために南アルプスのふもとにある梅ヶ島でハイキングをしました。途中、高山植物を観察し、温泉につかりました。
<富士山と防災について学ぶ>
8月6日に静岡大学理学部創造科学コースの1年生と一緒に富士山の新5合目から6合目まで登り、宝永火口などを観察しました。外国人観光客にも人気の富士山登山ですが、周囲を含めた地形の起伏や足元に転がっている石の様子から富士山の成り立ちがわかることを学び、富士山の地質学的な魅力を知りました。
また、8月8日に静岡県地震防災センターを訪問し、地震ざぶとんや液状化実験などを体験して、富士山で学んだ地質学的な知識が防災に活かせることを学習しました。
<駿河湾について学ぶ>
8月7日に東海大学海洋科学博物館を見学しました。駿河湾には深海魚や黒潮に乗って来た多様な熱帯魚が生息していますが、これらは香港では見たことがなかったそうです。参加者は、魚の動きを再現したロボットを操作し、魚が推進力を作る仕組みに感心していました。また、海洋観測で使用する測器についても学習しました。見学後の食事はもちろん海鮮丼でした。
<産業について学ぶ>
8月8日に日本平お茶会館を訪問し、茶摘みと茶もみによる製茶を体験しました。出来たお茶は、香港へのお土産になりました。また、8月9日に大井川に行き、日本で唯一のアプト式電車に乗り、電車が急勾配を滑らずに進む技術を学びました。
帰りは機関車トーマス号に乗り、昔の科学技術を後世に伝える知恵を学びました。大井川流域ではリニア中央新幹線の整備工事が始まりましたが、利便性と環境改変リスクにどう折り合いをつけるかが食事の際に話題になり、こちらの想定以上に超急峻環境科学への理解を深めてくれて頼もしく感じました。