2017年度 活動レポート 第105号:静岡大学アジアブリッジプログラム

2017年度活動レポート(一般公募コース)第105号

過去、今、そして未来をつなぐ静岡の輸送機器技術

静岡大学アジアブリッジプログラムからの報告

静岡大学アジアブリッジプログラム(ABP)では、2017年7月19日〜28日の10日間、「日本の輸送機器技術」のテーマのもと、さくらサイエンスプログラムを実施しました。「オートバイの発祥の地」としてスズキ、ヤマハ発動機、ホンダなどの日本の輸送機器産業を牽引するグローバル企業の集積地である浜松に、インドとインドネシアの計6校 から高校生と教員を招へいしました。

本プログラムの目的は輸送機器技術に関する知識を得ることだけでなく、その技術によってより豊かになった日本の人々の生活を体験することでした。将来科学技術の道へ進む若者へ、技術革新が人々の生活に与える影響と、技術は常により良い社会のために使われなければならないという責務を認識する機会となればという思いで計画しました。

<電車と生活スタイル>

プログラム期間中に参加者はいくつもの鉄道交通機関を体験しました。日本全国をつなぐ新幹線、最新新交通システム搭載のゆりかもめ、世界的にも珍しい昔ながらの大井川鉄道SLとアプト式列車、浜松地元民の足である遠州鉄道と天竜浜名湖鉄道。

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ゆりかもめの車窓から東京を見つめる参加者
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大井川鉄道SL体験

参加高校生のほとんどは電車に乗るのは初めてで、日本には用途と目的に応じて様々な種類の鉄道機関があることが大きな驚きでした。特に静岡の美しい山川に囲まれた自然の中を走る大井川鉄道は単なる交通手段としての鉄道ではなく、過去の貴重な遺産として末長く人々に愛される技術の形として存在しています。参加者は自らの出身地に鉄道を作るとしたらどのようなスタイルが人々の生活に適しているかを考察しました。

<輸送機器産業の現場で働く人々>

浜松を代表する自動車・二輪車メーカーのスズキ(株)、ヤマハ発動機(株)、そして、自動車・二輪車パーツ製造メーカーの朝日電装(株)を訪問しました。

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スズキの自動車設計を体験
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ヤマハ発動機からの温かい歓迎に喜ぶ高校生たち

朝日電装では、同社の最先端技術やグローバル事業についてプレゼンテーションを受けた後、スイッチやロックの製造過程を実際に見学しました。工場で働く多くの従業員が女性であったことに驚いたインドネシア女子生徒から、「工場で働く女性たちはどこであんなにも高度なスキルを身につけたのですか?」という質問がありました。

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朝日電装の社員の方々と一緒に

同社人事担当社員から「専門的な技術については入社後に社内で全て研修する」という回答があり、日本企業の社内教育制度に感銘を受けました。またインドの高校生からは製造業の発展著しいインドへも進出すべきという提案もあり、同社員の賛同を得ました。

<非常時に人々を助ける輸送機器>

航空自衛隊浜松基地のエアーパークでは、多くの航空機を間近に見ました。中には過去に実際の戦闘で使われたものもありましたが、その隣には救難捜索目的の航空機も展示されていました。阪神大震災と東日本大震災の事例をひいて、災害時に航空輸送機が被災地域へ物資を届ける役割についても学びました。私たちの歴史の中で、ひとつの技術が人を傷つけるためにも助けるためにも使われることがあるという気づきがありました。

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航空自衛隊パネルで

<日本で勉強し、日本に住む>

その他に参加者は、静岡大学で工学部数理システム工学科 高國傑研究室と情報学部情報科学科 木谷友哉研究室を訪問したり、日本人学生と共に授業を受け留学生との交流会に参加したりしました。

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静岡大学工学部高研究室にて火星を走る車技術を学ぶ
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静岡大学の日本人学生や留学生と交流会

また地域との交流として、SSH浜松工業高校では共同プログラムでインドやインドネシアの踊りを披露し部活動を見学したり、週末にはそれぞれ2泊3日でホームステイも体験しました。

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浜松工業高校にて茶道部によるおもてなし

浜松地域のロボット関連企業を集めたビジネスマッチングフェアにも参加し、輸送機器産業以外の企業と触れることができました。これらの体験を通じて日本で勉強し働くことを具体的に考える機会にもなり、参加者は帰国後から再来日に向けて準備を進めています。

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ロボティックス展示会にて人間と共に働くロボットについて説明を受ける