2017年度活動レポート(一般公募コース)第104号
アジアの未来を担う学生が、低炭素建築材料づくりの技術を学ぶ
北九州市立大学 高巣幸二さんからの報告
震災により発生した大量の震災がれきや、原子力発電の停止による火力発電の需要の高まりから生じる膨大なフライアッシュの処理が、今後重要課題となっています。
当研究室ではこれらの材料を使用するための技術開発を行っており、その成果を同様な問題を抱えているアジアの将来有望な学生に伝え、わが国の新しい環境理念・科学を世界に広げていきたいと考えています。
マレーシアのタンク・アブドゥル・ラマン大学から4名、中国の大連理工大学から2名、吉林建築大学から3名、計10名の学生と引率教員1名が、2017年7月27日から10日の、さくらサイエンスプログラム科学技術体験プログラムをを行いました。
当研究室では2009年度から科学技術振興機構(JST)のA-STEP・本格研究開発・起業挑戦タイプ「改質フライアッシュコンクリートの製造方法」(2012年度プロジェクトリーダー:高巣幸二)に取り組んでいます。
ここでは低品質なフライアッシュの未燃カーボン除去による改質方法を確立し、これらの廃棄物および未利用資源をコンクリートの構成材料と位置づけ、コンクリートの高品質化を図る研究を実施しています。現在低炭素コンクリートに関する実験装置や多くの成果資料を有し、またその技術特許を利用した実装プラントは沖縄に設置しています。
沖縄プラントの視察
沖縄で事業化された低炭素コンクリート工場の授業やワークショップを通して、コンクリートの原料にリサイクル材料フライアッシュを大量使用することにより、CO2排出量を大幅に減少させる原理、フライアッシュの品質改善手法をアジアの若手研究者に理解してもらいました。
講義では、環境負荷低減および再生建材有効利用の科学技術の講義を行い、ライフサイクルアセスメントの理論;低炭素コンクリートを実現するため、フライアッシュの品質改善手法;再生建材リサイクルのプロセス;再生建材低炭素コンクリートの分析手法について学習しました。
その他、沖縄の水族館、福岡のトヨタ工場等も見学をし、日本の伝統文化等も学ぶことができました。
我が国では1億m3を超えるレディーミクストコンクリートの生産に伴って膨大なCO2が排出されておりますが、コンクリートの原料にリサイクル材料フライアッシュを大量使用することによりCO2排出量を大幅に減少させることができます。
本プログラムを通して、アジアの若手研究者に我が国の最先端の科学技術を理解してもらいました。今後このような取り組みを継続し、アジアの新しいリサイクル産業および環境産業の振興に貢献していきたいと考えています。