2017年度活動レポート(一般公募コース)第102号
中国の大学生が、日本の最先端耐震技術を学ぶ
北九州市立大学国際環境工学部 保木和明さんからの報告
我が国では、地震大国として、今まで、災害の発生過程における人間活動と、その社会経済環境への影響の重要性、社会の災害脆弱性の変化過程に関して科学的なアプローチ、事前の改善方策や災害後の復興施策に関して、総合的な防災研究等を多く行ってきました。
特に建物の地震災害に対する脆弱性を総合的に診断し、安全性、快適性を備えた持続可能な社会を構築するための防災設計・計画および災害マネジメント技術や方法論の構築に関する基礎研究を多く実施しています。
一方、アジアの国々でも近年では多くの地震が発生しており、建物の被害も測れ知れないほど深刻です。今回の交流計画では、建物の耐震診断・改善に焦点を置きながら、建物の地震対策を総合的に学習してもらい、我が国の最先端の地震技術を伝え、国際貢献を図っていきたいと考えました。
今回の助成を受け、2017年7月15日~7月24日の日程で、中国大連民族大学3名、西安交通大学4名、吉林建築大学3名、計10名の学生と教員1名が10日の共同研究活動に参加しました。
歓迎会では、学部長の龍先生をはじめ、事務局の責任者岩田部長等も参加しました。
プログラムにおいて、まず北九州や大学における震災教育・研究と実社会との繋がりを紹介し、前半主に建築物の耐震改修の科学技術の演習講義を行いました。
講義では、主に下記のものを中心に行いました。
① 建物の耐震改修の必要性
② 建物の地震に対する安全性
③ 建物の耐震診断手法
④ 建築物の耐震改修の計画
⑤ 耐震改善の事例及び模型学習
後半は現場体験および耐震改修に関する模型実験を行いました。熊本震災地の視察や耐震改善の事例演習を通して、震災復興や耐震改修技術を勉強してもらいました。また、小倉駅前の避難計画等も見学しました。
工場見学では、安川電機の産業ロボット展示館を見学し、これから都市建築における災害時ロボットの活用方法について勉強を行いました。
訪問中に北九大大学院生の授業にも体験をし、特別講師中上英俊先生の授業でアジア都市のエネルギー事情について勉強しました。
また、熊本視察の帰りに、九州国立博物館、天満宮等に寄り、日本の歴史や伝統にも触れあいました。
修了式では、プログラムの責任者により、一人ひとり修了証書を渡しました。
大地震に対して大きな被害となることが予想される古い建物は、現在もなお多く残されています。大震災を防ぐため、これら建物を地震に対して効率よく強くする方法を提案する必要があります。
アジアの国々において、例えばインアドネシアや中国大地震でも、多くの建物被害を受けています。今回のプログラムを通して、熊本震災地の状況や日本の耐震技術について勉強になったかと思います。これからも日本の先進技術をアジアの学生に伝えていきたいと考えています。