2017年度活動レポート(一般公募コース)第72号
カザフスタンの大学生・研究者が、日本のロボット研究開発現場を体験
武田計測先端知財団からの報告
武田計測先端知財団は、2017年7月17日(月)~25日(火)の日程でカザフスタンの大学生、研究者11名を招へいし、日本が世界で最も進んでいる、民生用ロボットの研究開発の体験学習を行いました。
カザフスタンは、「カザフスタン2030」という発展戦略に基づく産業イノベーションを推進しており、日本の最先端科学技術に強い関心を持っています。
今回の交流では、学生だけでなく、研究現場から民間への技術移転を目指す研究者も参加しています。7月18日に実施したオリエンテーションでは、これからの体験学習についての事前学習とともに、研究開発とイノベーションの関係について、元東大教授西村吉雄先生に講演してもらいました。
今回のロボット開発に関する体験学習では、ロボットの二つの機能に注目しました。一つは、人間とコミュニケーションを行う機能、もう一つは、動くことによって人間の役に立つという機能です。人間とのコミュニケーションを目的に開発されているロボットについては、19、20日に京阪名の情報通信機構(NICT)データ駆動知能システム研究センター(DIRECT)と国際電気通信基礎技術研究所(ATR)を訪問して見学しました。
DIRECTではビッグデータを意味論的に解釈し、価値のある情報の組み合わせを提示する技術を学びました。また、DIRECTは音声対応の自動翻訳技術VoiceTraを開発しており、招へい者は早速ダウンロードして、日本語-ロシア語の自動翻訳を試していました。
ATR川人研究室では、言語を介さず、脳と機械との直接的なコミュニケーションを目指すBrain-Machine Interfaceや脳活動イメージングについて学びました。石黒研究室では、言語を介した人間とロボットとのコミュニケーションについて体験しました。ヒューマノイドとのコミュニケーションでは、言語の内容だけでなく、話し手の性別や触感などがコミュニケーションをする上で大きな働きをすることを学びました。
日本滞在5日目からは、動くことで人間の役に立つロボットの開発について学びました。21日午前は、東京大学工学部知能情報システム研究室(國吉・新山研究室)を訪問し、ヒトの筋肉を模倣してダイナミックに動くことのできるロボットの開発について学びました。
また、招へい者の中には国際ロボコンにカザフスタン代表として参加する予定の学生がいましたが、訪問中に工学部の建物のロビーで練習をしている東大チーム(国吉・新山研がサポート)とバッタリ遭遇し、お互いの健闘を誓いあいました。
翌週の24日には、筑波大学人工知能研究室を訪問し、ヒトの体による知覚と行動に関する生理学的アプローチと、認知特性の理解を中心とした認知的アプローチに基づいた、身体機能支援技術(サイバーノイド)について学びました。
今回の体験学習では、招へい者は、高度なコミュニケーション機能を持つロボットの研究から実際の介護の現場に導入可能なロボットの開発まで、多様な技術開発を学ぶことができ、カザフスタンでのイノベーションを考る上で大きな収穫になったと思われます。