2017年度活動レポート(一般公募コース)第63号
雪氷防災の研究および雪国文化に関する日中交流
防災科学技術研究所からの報告
防災科学技術研究所雪氷防災研究センターでは、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、平成29年9月3日〜9月9日の日程で中国科学院新疆生態与地理研究所(ウルムチ市)より大学院生5名(うち博士課程2名、修士課程3名)を招へいしました。
新疆生態与地理研究所では、中国西部の天山山脈、崑崙山脈、アルタイ山脈などの広大な雪氷圏をフィールドとして雪氷防災や地球科学の研究を行っていて、平成27年に当研究所と包括的研究協力協定(MOC)を結んでいます。
はじめに、雪氷防災研究センター新庄雪氷環境実験所(山形県新庄市)において、今後、雪氷に関するテーマを研究する際に必要となる、雪氷の基本的性質や観測方法、次に雪崩、吹雪、着雪に関する個別のテーマについて、その発生メカニズムや対策方法について学びました。
1日コースの野外研修では、新庄市の「雪の里情報館」と鶴岡市田麦俣の「多層民家」を視察し、雪国文化の一端に触れました。前者は我が国最初の雪の研究所として発足した当時の資料が展示されており、後者は豪雪地帯での人々の暮らしぶりが分かるようになっています。
また、雪氷災害の対策事例として国道7号の吹雪防雪柵と国道112号の月山国道維持出張所(国土交通省)や雪崩防止柵を視察しました。
最後に、雪氷防災研究センター(新潟県長岡市)に移動して、積雪の層構造を再現するための積雪変質モデルの原理と、シミュレーションソフトの操作方法について学びました。
また、研究談話会を開催し、防災科学技術研究所が独自に招へいした新疆生態与地理研究所の研究員から融雪モデルに関する研究を紹介してもらい、今後の進め方について意見交換を行いました。
研修は実質4日間でしたが、大学院生達は、将来の研究を進める上で不可欠な雪氷学の知識の吸収に努めていました。また、実験施設や観測装置についても多くの質問を投げかけて、関心の高さがうかがえました。
修了式の前に行ったアンケートでは、全員が今回の訪問が有益であったこと、さらに今後の研究交流に期待するという意見が大半でした。
最後に、このような貴重な機会を与えていただいた、さくらサイエンスプログラム、および見学を許可していただいた国土交通省東北地方整備局酒田河川国道事務所月山国道維持出張所に感謝いたします。