2017年度活動レポート(一般公募コース)第60号
3次元高精度DSMを用いた地すべり災害の総括的リスク管理手法の構築
東北学院大学からの報告
東北学院大学は、ベトナム交通省所管の交通科学研究所との間で、表題に関する2年間の若手研究者の招へいを中核とする交流協定を締結し、2017年6月8日から17日の日程で、本学、松島湾の浦戸諸島、東北各地の地すべり地を訪問しました。
訪問地では、本学関係者、現地担当の関係者らと交流を行い、またGNSS(衛星を用いた測位システムの総称)とUAV(無人航空機)を用いて、高精度のDSM情報(全球陸域を対象とした数値地表モデル)の取得実験を行いました。
東北地方は、大規模な地すべりで形成された地形や、地すべり災害の管理についての調査・研究・対策の経験が豊富です。一方で、ベトナムは国土のインフラ整備を急速に進めており、道路網の整備や拡充に伴い、斜面災害のリスクが高まっています。
①地すべり調査から対策工に関しては、2007年岩手宮城内陸地震に際して発生し、緊急対策がほぼ完了した宮城県の荒砥沢地すべり、
②冷沢地すべりの踏査では、内陸直下型地震と地すべり性の破壊・移動、2次破壊とその対策、などの説明を受けました。
山形県の巨大地すべりである銅山川地すべりでは、その概要の解説、地下水排除の工夫としての排水トンネルと落とし込みボーリングの説明を受け、排水トンネル内の視察を行い、秋田県では、谷地地すべりと最近発生したごく小規模な地すべりの対策と、露出したスベリ面の観察を行いました。
特に秋田では、ベトナム出身の技術者も説明に参画していただき、ベトナム語での詳しい説明を受けることが出来ました。
浦戸諸島、荒砥沢、銅山川地区では高精度の地形データを作成して地すべり変動の状況を把握するために、地上基準点の設定、UAVによる高密度画像データの取得などを行いました。ベトナム側研修生らは、既に、UAVを用いて本国北部の斜面災害データを試作中でもあり、チーム一体となって迅速な計測を行えました。
わずか10日間ではありましたが、7名の若手研究者・技術者と日本側の研究者・技術者の交流は、大いに成果を上げたと考えています。
ベトナム側の報告では、
★「殆どのベトナム側の参加者にとって、本企画による典型的な地すべり災害現場の訪問と解説を受けたことで、ベトナム国内では認識できない大規模地すべりへの注意喚起が必要であることが分かった」
★「地すべり対策工のあり方の検討過程とその効果検証が客観化され、施工管理も徹底している点が、将来の災害リスク軽減の基礎となることとして理解できた」
★「来年度も、UAVを用いて同じように現場データを取り直すことで、地すべりの変動状況、樹木などの成長や変形状況の把握が期待できる」
などの肯定的な意見が出された一方で、
「人里離れた山間地においてまでも、これほど徹底した対策を行うことが果たして妥当なのか?」という議論もありました。
ベトナムにおける安全確保の面では、住民の移転が大きな政策になっているとのことです。