2017年度活動レポート(一般公募コース)第30号
高エネルギー加速器研究機構
加速器研究施設教授 内藤富士雄さんからの報告
平成29年度のさくらサイエンスプログラム(複数年)の採択に伴い、7月19日(水)~27日(木)の9日間、中国・華中科技大学(HUST)の大学院生を中心とした11名を高エネルギー加速器研究機構(KEK)に招へいしました。
今年は交流計画の初年度に当たり、下記プログラムにあるような日程で講義・実習・施設見学を、KEKつくばキャンパス・東海キャンパス両方で実施しています。
KEKは稼働中の加速器施設を数多く有しており、世界でも最先端の加速器研究施設であることから、最先端加速器技術を身近に体験できるようなプログラムを目指しました。また、講師・見学引率者等は最先端の加速器の現場で活躍している第一級の研究者にお願いし、将来の研究等について参加者自身が自己啓発するような体験になることを期待しました。
プログラム前半はKEKつくばキャンパスに於いて、まずは加速器基礎を中心に、SuperKEKB等についての講義です。
実質プログラムの最初にも拘らず数多くの質問が学生達からなされ、時間が足らず、次の日の夕方にまた講師の先生に来て頂いて質疑応答を行うという、とても充実した講義となりました。参加者達の強い意欲が窺われ、幸先の良いスタートであったと感じています。
続いてKEKつくばキャンパスにある加速器施設(LINAC・SuperKEKB・cERL・STF)と検出器(BELL-II)の見学を実施しました。
普段、大学で接する小規模な加速器と比べ、巨大さ・種類の多さに圧倒されたと同時に、それぞれが持つ意味・意義を学習したことと思われます。
さらに次の日は、わずか1日間ですが実習を実施しています。数名ずつのグループに分かれ、学生達が大学で担当(勉強)している内容に近いテーマに絞った実習でした。そのためか、かなり深いところまでの理解が得られているように感じました。
学生達の言葉の端々に少人数実習の成果が見受けられ、自身の大学での勉学と相伴って、深い理解が得られたものと考えられます。
プログラムの後半は東海キャンパスで、主にJ-PARC加速器の講義と施設見学です。
J-PARC加速器はLinac・RCS・MRの3つの加速器から成り、それぞれの講義と見学をセットにした形で行いました。講師には比較的若い世代の研究者にお願いをし、ご自身の専門分野の解説を入れた形で、講義等をして頂きました。
また夏期メンテナンス期間中ということもあり、通常は見学できないトンネル内にある加速器の装置も見学に組み込みました。学生達は、つくばにある(陽)電子加速器とJ-PARCの陽子加速器との違いを肌で実感できたと思います。
最終日には学生達による、今回の講義・見学・実習等で印象に残ったものを紹介するという、発表会を開催しました。往々にして感想等が主となるのですが、全員が科学的な題材を主とした発表を行っており、来日した学生達のレベルの高さ・意識の高さを見ることができました。こちら側からも多くの研究者が発表会に参加し、双方にとって有意義な時間だったように考えられます。
概ね成功裡に終了しましたが、いくつか課題はあったと考えます。プログラムの狙いとして、加速器に関する幅広い知識を身に付けてもらうため、見学を中心とした構成にしていましたが、学生達の発表や質問等を聞く限りでは、自身の研究に沿った話・質問しかしていないように見受けられました。
見学の経験が身に付く所までは、中々到達しなかったようです。見学も少人数グループに分かれて手厚くしたり、実習の回数を増やして自身の研究以外の課題を実習させたりする等の工夫が必要と考えられます。
また学生達の報告書を見る限り好評だったと思われますが、次年度に向けての改善点という形で聞けば、様々な課題が浮かび上がってくると感じています。これらを踏まえ、来年度以降のプログラム等に反映させていきたいと考えています。
プログラム- 1日目: 到着
- 2日目午前: 講義(つくばキャンパス)
- 2日目午後: 加速器施設見学(つくばキャンパス)
- 3日目: グループ実習(つくばキャンパス)
- 4日目: 日本科学未来館訪問
- 5日目: 日本文化体験
- 6日目午前: J-PARC移動・講義(東海キャンパス)
- 6日目午後: 講義・加速器施設見学(東海キャンパス)
- 7日目午前: 講義・加速器施設見学(東海キャンパス)
- 7日目午後: 実験施設見学(東海キャンパス)
- 8日目午前: 講義・加速器施設見学(東海キャンパス)
- 8日目午後: 発表会・懇親会(東海キャンパス)
- 9日目: 帰国