2017年度 活動レポート 第17号:高知大学

2017年度活動レポート(一般公募コース)第17号

黒潮流域圏を舞台とする分野横断型教育研究を理解する

高知大学からの報告

2017年7月21日から30日にかけて、さくらサイエンスプログラムの招へい者(フィリピン6名、台湾4名)が来日しました。

黒潮圏総合科学専攻では、フィリピンや台湾の協定校と持ち回りで国際シンポジウムを開催しています。11回目となる今年は、高知大学が当番校です。一方、国費留学生優先配置プログラム「黒潮圏の持続型社会形成を目指す人材育成プログラム」により受入れているフィリピン人留学生の第1期生3名が、今秋に修了の予定です。

そこで、今回の交流事業では、招へい者が最先端の技術や研究動向に触れるとともに、分野横断型教育研究が如何なるものかを理解することを目指して、ラボ訪問や実習体験、フィールド見学から、シンポジウムでの発表、学位論文公開審査会への出席までをメニューに組み込みました。

1.最先端の技術・手法を学ぶ

岡豊キャンパスでは、フローサイトメーターによるリンパ球の機能性集団の研究法や、小胞体を介する細胞内シグナルの分析法、マススペクトロメトリーの原理、造礁サンゴの染色体解析方法などの解説を聞き、実際の分析機器の手ほどきを受けました。

写真2
フローサイトメーターの説明を受ける

朝倉キャンパスでは、落射蛍光顕微鏡による多核緑藻の各種部位を多重蛍光染色した試料の観察や、透過型電子顕微鏡によるサンゴ組織の観察を体験し、個々の細胞や組織で起こる現象や構造変化の過程を微細形態面から解明する方法を学びました。海洋コア総合研究センターでは、海底コア試料の最先端の分析設備を見学し、コア試料の解析の重要性を学びました。

写真3
落射蛍光顕微鏡で多重蛍光染色試料を観察する
写真4
海底コア試料の貯蔵庫にて

2.最先端の研究動向を知り、分野横断型教育研究の重要性を理解する

学位論文公開審査会では、留学生5名の学位論文発表を聴講しました。シンポジウムでは、陸域から海域までの生態系やその保全、人々の暮らしや資源利用など多岐に渡る研究成果を聴講しました。基調講演3題、一般講演52題(口頭32題、ポスター18題)の発表があり、招へい者も口頭3題、ポスター8題を発表しました。106名(海外からは招へい者も含め33名)の多様な分野の研究者による熱気のこもった討論を体験しました。

写真5
国際シンポジウムに参加
写真6
口頭発表
写真7
フィリピン,台湾,日本の学生の交流の場に

3.相互理解の重要性と難しさを理解する

シンポジウム開催にあわせて、各国の学生が一つのテーマを討議することにより、ディベート力と相互理解力を涵養することを目的に、クロスボーダーエデュケーション企画を実施しています。今回は沿岸域のプラスチック汚染問題をテーマに、招へい者や専攻学生が議論を交わし、広く知られる環境問題であっても、各国の事情や研究分野によって捉え方が異なり、解決へとたどり着く難しさを理解しました。

写真8
クロスボーダーエデュケーション企画での討議

4.分野横断型研究の成果を知る

室戸世界ジオパークと、黒潮圏総合科学専攻の学生が代表を務め、海洋深層水による海藻の陸上養殖事業を展開する「合同会社シーベジタブル」を見学し、後者では分野横断型研究の成果がどのように生かされているのかを理解しました。

写真1
室戸世界ジオパーク 岩を抱くアコウの木
写真9
海藻の陸上養殖事業の説明を聴く
写真10
さくらサイエンスプログラム修了証を受領