2017年度活動レポート(一般公募コース)第5号
北海道に生育する代表的コンブ種の系統と適応進化の解明に向けて
北海道大学からの報告
北海道大学北方生物圏フィールド科学センターでは5月11日から31日にかけて中国科学院海洋研究所からポスドク1名と大学院生(博士課程)1名の若手研究者を受け入れました。
来日の翌日から直ちに、共同研究を推進していくうえでの技術的な課題を議論し、週末には時間をかけて自らの考えを整理してもらう作業を行いました。また、議論の合間に北海道大学総合博物館を訪れ、大学で研究されている最先端の研究内容を学びました。
滞在5日目からはフィールド作業と研修が始まり、先ずは4日間をかけて稚内と厚岸、釧路を訪れました。
稚内ではリシリコンブの生育地を訪れ、次いで稚内水産試験場において標本調査を行うとともに、コンブの先端増殖技術について解説を受けました。
厚岸では北大厚岸臨海実験所を訪れ、実習船に乗り込んでオ二コンブとナガコンブを採集しました。今回、招へい者にとって天然コンブを採集するのは初めてであり、コンブを研究材料とする本人達にとってとても良い経験になったようです。
得られた藻体は計測後、遺伝子解析用サンプルとして丁寧に処理されました。その後、実験所内の研究室において日中若手研究者の交流を行いました。
また、釧路では釧路市水産資料展示室を訪問し、貴重な歴史的資料に目を通すとともに、漁業と先端技術について知見を得ました。
一方、滞在12日目からは3日間をかけて小樽と余市、洞爺と室蘭を訪れました。
小樽では北大忍路臨海実験所の前浜においてホソメコンブを採取しました。今回は胴長を着用して海に入り、自らの手でコンブを採集することにより、先の船上作業とは違ってコンブの生育状況を感覚的によく理解できたようです。
次いで訪れた余市の中央水産試験場では、北海道の水産の現状と、道内各地の試験場で取り組まれている試験研究について説明を受けました。
更に、場内にある設備を見学しましたが、特に全長が27mにおよぶ波浪環境シミュレーション水槽の前では二人ともが足を止め、それを用いた実験について熱心に担当者に質問をしていました。
その晩、洞爺湖温泉郷で温泉宿(和室)に宿泊し、二人とも初めて香しい畳の上で睡眠したということで、とても感激していました。
翌日は北大洞爺臨湖実験所を訪問し、洞爺湖の自然環境について説明を受けた後、モーターボートに乗船して計測機器用いた水質測定と、プランクトンの採集を体験しました。
また室蘭では、招へい者が担当する北大室蘭臨海実験所の理学部実習に合流し、学部学生とともに磯でマコンブを採集する一方、講義にも熱心に耳を傾けていました。
帰札後は、得た研究材料を用いて二人が帰国後にゲノム解析するための準備を行いました。これまで委託業者に頼り、理解の不十分であった内容についても、招へい者らが進める技術を目と耳で理解し、帰国後は自分たちの考えのもとで研究が進められるようになりました。
全てのスケジュールを滞りなくこなし、5月31日に無事に帰国しました。