2017年度活動レポート(一般公募コース)第3号
素粒子実験のための検出器開発に関する共同研究
高エネルギー加速器研究機構
素粒子原子核研究所教授 三原智さんからの報告
さくらサイエンスプログラムにより2017年5月11日〜5月31日の3週間にわたって、インド工科大学ボンベイ校の学生10名が来日し、高エネルギー加速器研究機構に滞在して素粒子実験のための検出器開発に関する共同研究を実施しました。
インド工科大学ボンベイ校とは、高エネルギー加速器研究機構における共同利用研究施設において共同研究を実施していることから、研究者間での研究交流を普段から行っており、このことがきっかけとなって、この度、学部学生を招へいして共同研究を実施する運びとなりました。
今回の共同研究の課題としては、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所で進めている研究内容の中から、
① ミューオン稀崩壊プロセス探索のためのカロリメータ開発
② ミューオン精密実験のための磁場中での光電子増倍管の性能評価
③ 宇宙背景輻射(CMB)観測のための検出器開発
を準備し、10名の学生が3つのグループに別れて取り組みました。
グループの選択にあたっては、担当する教員からそれぞれの研究内容についての紹介を行った後、参加学生同士の議論により自主的に決定してもらいました。
それぞれの研究においては、まずは開発を行う検出器がどのような素粒子実験で使用するものなのかについての詳細な説明を担当の教員から受けた後、教員と一緒に実際に検出器を動かすところから始め、データ収集とデータ解析までやり遂げて、今後の開発に必要な結論を導出するところまでをグループのメンバーと議論をしながら進めるというスタイルをとりました。
研究を開始した最初の頃は、検出器を動作させる事も恐る恐るでしたが、終盤にはそのための技術と経験も十分に習得し、参加学生たちだけで様々な計測をこなせるようにまでなっていました。
滞在期間の最終日には、参加学生たちによる研究発表を行いました。それぞれのグループのメンバーが協力して今回の滞在中に行った研究内容とその結果について、発表資料の製作から発表までを行いました。
発表では、担当した教員たちも参加していましたが、特に参加した学生から他グループの発表に関して多数の質問が出ていた点は、好感のもてる状況でした。今後も自分が進める研究内容に加えて、他の研究者が進める研究内容に関して批判的に興味を持つという態度を持ち続けてほしいものです。
なお、今回の滞在期間中には、高エネルギー加速器研究機構のつくばキャンパス、東海キャンパスの2箇所で、研究施設の見学ツアーを実施しました。普段所属する大学では接する機会のない大型実験施設を多数訪れ、その大きさと精巧さに強い感銘を受けていたようで、説明を担当してくれた職員に対して、幾つもの質問を投げかけていました。
本プログラムに参加した学生の帰国後、今回のプログラムに参加できたことに対する感謝のメールが届いています。その殆どに、再度日本を訪れて本格的な研究を行う事を希望している旨の内容が含まれており、実施を担当した教員たちも手応えを感じています。
最後に、このような機会を与えてくれたさくらサイエンスプログラム、ならびに協力をしてくれた高エネルギー加速器研究機構のスタッフに、担当教員一同深く感謝している次第です。