2016年度 活動レポート 第395号:東京農業大学地域環境科学部

2016年度活動レポート(一般公募コース)第395号

震災に対するレジリエンス向上を目指した共同研究交流

東京農業大学地域環境科学部教授 三原真智人さんからの報告

本プログラムは、JST(科学技術振興機構)による2015年のネパール地震と2016年の熊本地震に関連した「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)」に共同研究チームとして参画した、東京農業大学とネパールのカトマンズ大学の大学間の研究交流を深めるために、2017年3月6日から15日までの10日間に渡り実施したものです。

これまでに東京農業大学とカトマンズ大学は、J-RAPIDにおいて、農山村地域の被災状況に関する国際共同研究を実施し、双方の研究者らが共に被災現場で震災復興の進め方等について議論を重ねてきました。

この経験を活かして、本格的に東京農業大学とカトマンズ大学の大学間の研究交流を試みたのが本プログラムです。

具体的には、カトマンズ大学からネパールの震災復興やアジア地域における、震災に対するレジリエンス研究を志す若手研究員や大学院生・学部生ら10名を東京農業大学に招へいし、これまでJ-RAPIDで実施してきた共同研究成果に関するワークショップ、防災、GIS、里山での自然資源管理等に関する講義やセミナーを開催して、研究交流を深めました。

写真4
J-RAPID熊本の研究に関する講義
写真5
土壌の炭素貯留に関する講義

日本国内では東京農業大学のみならず、茨城県つくば市や東京都町田市に位置する関連機関も訪問しました。つくば市の防災科学技術研究所では、日本の耐震技術を含めた防災技術の最前線に、また農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)では、農村計画や農業工学の最新技術に触れました。

写真7
農研機構の「食と農の科学館」見学
写真8
農研機構の研究施設見学

写真2
防災科学技術研究所の研究施設見学

一方、東京都町田市では、アジアの途上国における開発と環境問題に取り組む環境修復保全機構を訪問して、各種の国際協力プロジェクトの紹介を受けるとともに、隣接する「図師小野路歴史環境保全地域及び奈良ばい谷戸」を訪問する機会を得ました。

この「図師小野路歴史環境保全地域及び奈良ばい谷戸」は、環境省により「重要里地里山」に選定された地区で、現地農家と交流を深めつつ、自然と人間との環境共生や自然環境に調和した農業的土地利用のあり方について学習しました。

写真1
日本の里山見学と農家との交流

その他、東京都内を散策し、日本の伝統文化から都市部の現代建築等を堪能してもらいました。

写真10
東京都内散策

上述の研究交流において得た知識を活かして、ネパールにおける震災に対するレジリエンスの向上を目指した課題と、日本の技術の導入の可能性について、3グループに分かれて調査を行い、その成果発表会を開催しました。

写真9
グループ発表会

1つ目のグループは、ネパールにおける自然災害とそれらの農業分野へのインパクトについて調査し、日本のどのような技術が導入されるべきかについて議論しました。

2つ目のグループは、2015年のネパール地震による公衆衛生上の問題に焦点を当てました。被災時に多くのトイレが損壊して、衛生面の問題が危惧されたことから、手軽に耐震性のある仮設トイレを設置できる方策について、調査結果を発表しました。

写真6
ネパール地震と熊本地震に関するディスカッション

最後のグループは、ネパールでの持続可能な開発における農業分野や防災分野に、どのように日本の技術が活かせるかについて検討しました。特に防災分野では、これまでにネパールで行われてきた震災調査を強化できる、効果的な日本のGISを活用した広域地理情報技術の適用策について、提案がありました。

ネパールのカトマンズ大学の教員や学生は、本プログラムを通してネパールでは経験することができない人間関係や研究環境に触れることができ、非常に有意義な交流となりました。

今後、さらに大学間の交流が深化し、震災に対するレジリエンス向上を目指した研究交流が発展することが期待されます。

写真3
修了式