2016年度活動レポート(一般公募コース)第377号
体外循環装置を用いた治療法における、血液凝固問題の予防と防止
木更津工業高等専門学校からの報告
招へい者は1月23日の午前に来日し、午後に木更津工業高等専門学校でオリエンテーションおよび研究現状報告を行いました。
研究テーマは、体外循環装置(人工透析、人工心肺装置)を用いた治療法における、血液凝固問題の予防と防止です。 世界中での年間病死者のおよそ30%は心血管疾患が原因だと言われています。心血管疾患の患者にとって、血液の状態を維持すること(血栓、出血などを起こさないような対策)は大きな問題です。
心血管疾患と、そこでの血液凝固問題の対策に関連する研究は、主に
- 1) 臨床的介入
- 2) 創薬、
- 3) マルチスケール・マルチフィジクス解析、
- 4) ポイントオブケア技術(*診療所、在宅、病院の診察室やベッドサイド、また手術室やICUなど、診療の現場で行う検査)の開発
以上4個のテーマに分けられます。
この4個のテーマは互いに密接に関連しているにも関わらず、医療現場での統合的対応までには至っていません。
本共同研究では、電気計測によるポイントオブケア方法の確立に関する研究を実施している日本側チームと、コンピューター•アルゴリズムおよびバイオテクノロジーを専門とするネパール側チームの交流で、凝固問題を対策する新しい方法の可能性を検討することを目的としました。
具体的な活動として、招へい者の学生は、1月24日、千葉大学にて体外循環装置について説明を受けました。また、体外循環模擬流路を用いた実験にも参加しました。
1月25日〜30日の間、木更津高専でバイオコンピュティングツールの基礎的説明を受け、血液凝固に関連するたんぱく質の相互作用、血液凝固モデル構築を行いました。
また、バイオインフォマティクス分野(*遺伝子やタンパク質の構造といった生命が持っている「情報」と言えるものを分析することで生命について調べる分野)の専門家である、慶應義塾大学杉本准教授の講義も実施しました。
招へい者にとっては、全く新しい手法を学ぶ有意義な機会になりました。短い期間でも目的を十分に理解し、簡単なモデル構築、および解析を行なうことに成功しました。
1月30日〜2月5日の間、ポイントオブケアのバイオマーカとして、代謝物質バイオマーカを中心とした研究を実施しました。
近年、分子バイオマーカでは、代謝物質の特徴を調べるメタボローム解析によるバイオマーカ発見が高い評価を受けています。
メタボローム解析とは、主に質量分析計を使って、分子の質量を測定して代謝物の種類と量を調べるものです。既知のメタボライトを選択的に分析する「標的メタボローム解析」と、すべての化合物の中から変化したメタボライトを探す「非標的メタボローム解析」の二つの方法があります。
本研究では、非標的メタボローム解析による、相対的なメタボローム変動を調べました。主に文献マイニングによって代謝物と血液凝固の相関性を調べました。
2月6日〜2月9日の間、 変動したメタボロームの中で、電気信号法によって計測可能なメタボロームについて調べました。
最終的に、滞在中の実施課題をまとめ、今後の予定についてディスカッションセミナーを行いました。同セミナーでは千葉大学今泉祥子准教授(コンピュータアルゴリズム専門家)による講義も受けました。
帰国後も定期的インターネットを通じてディスカッションを行なっており、共同研究活動を継続しています。
これらの経験から、招へい者の学生は、日本の高等教育および科学技術、特に今回のようなバイオテクノロジー•バイオインフォマティクス分野、に感化されており、将来的に日本への留学を希望しています。