2016年度活動レポート(一般公募コース)第353号
「震災と法」について考える日中交流プログラム
大阪市立大学大学院法学研究科教授 桐山孝信さんからの報告
2017年3月4日から11日まで、福州大学法学院の教員4名、大学院生4名、学部生2名を招いて、「震災と法」を交流テーマとして、さくらサイエンスプログラムのプログラムを実施しました。
日中両国では震災が多発するにも関わらず、法制度の不備があり、新しい施策を必要とする状況があります。本交流では、防災、救援、復旧、復興という震災対策の各段階で、日中両国が展開している施策について、どのような特徴と問題点があるのか、日中両国の現状と課題について意見交換を行うことを目的としました。
他方で、日中間には大きな違いがあります。それは、地震国日本と、四川大地震に見られるように、時に大きな地震を経験しているが、全く地震体験のない者もいるという中国との違いです。
今回のプログラムの特徴は、阪神淡路大震災などの実態を知ってもらい、震災からの復興作業がどのように展開しているかを、自然科学的、技術的知識を踏まえて法制度研究を行うことも目標としました。
そのために、まず、神戸市にある「人と防災未来センター」と淡路島にある「北淡震災記念公園」を訪問し、震災の実態とそれへの対策(例えば、建物の耐震化の工夫)などについて、基本的な知識を理解していただきました。
特に地震を体験した者がほとんどなかったので、北淡震災公園での震度7の擬似体験は非常に新鮮なものとなったようです。
これらの体験を踏まえて、日本における震災に対する法政策、とくに安全な地域作りのため公共事業に関する議論を紹介し、必要な法制度について、これまでの震災対応の教訓を引き出した。また、震災に伴う保険のあり方について、日本の状況を紹介しました。
これに対して、中国における防災に関する体系的な法制度について、報告がなされました。また防災という点から、中国では大気汚染が焦眉の課題であることから、それについての報告もなされました。
防災に対する大学の役割も重要になっています。そこで、大阪市立大学が2015年3月に創設した「都市防災教育研究センター」から講師を招いて、センターのミッションや地域との交流状況について紹介し、大学の役割について議論を展開しました。
企業もまた、防災に対する社会的責任を有しています。そこで、プログラムの最後に、企業が行っている防災対策について、大阪に本社があるパナソニックを訪問し、企業内での防災活動について、建物や生産設備などのハード対策、安否確認システムや非常時通信システムなどのソフト対策について紹介していただきました。
今回は、2016年11月に福州大学と本学法学部との間で学術交流協定を締結して初めての、本格的な交流の機会となりました。
防災に関する法的課題について、日中の比較研究を行う貴重な場となっただけでなく、神戸や淡路島での震災の実態を見ていただくなど、双方にとって有益なプログラムとなりました。