2016年度活動レポート(一般公募コース)第312号
先端放射線計測を学ぶ国際交流プログラム
大阪大学核物理研究センターからの報告
大阪大学核物理研究センターでは、2016年11月24日から12月3日の日程で、ベトナム、カザフスタン、マレーシア、インドネシアから学生を招へいし、先端放射線計測教育プログラムを実施しました。
このプログラムは、最先端の放射線計測を実際に手に取り、実習行うことを特色としています。
ASEAN諸国などでは十分な数の装置がないために、実際に装置を触ったことのない学生が多くいます。そのような学生に、自ら手に取り装置を学ぶことを教え、その際、扱い方を覚えるのではなく、装置の背景にある物理現象について考える必要があることを知る機会となることを目的としました。
選抜
招へいする学生は、面接によって選抜しました。
9月にプログラムに協力する各大学に候補者を選ぶよう依頼し、10月上旬、Skypeを用いて34名の面接を行ないました。最終的には、この中から14名と、7月にベトナムで面接していた2名を加え、16名を招へいすることとしました。内訳は、カザフスタン1名、ベトナム9名、マレーシア2名、インドネシア4名、これに引率者2名です。
面接では、放射線計測に関係した質問を行い、質問の意味を理解できるか、それに対して自分の持っている知識を説明できるかという、コミュニケーション能力を重視して行ないました。同時に、プログラムのレベルを学生に合わせて用意するため、予備知識をどのくらい持っているかも見定めました。
面接には現地の教員にも参加してもらい、我々がどのような学生を招へいしようとしているかを理解してもらえるように配慮しました。
実習
大阪大学核物理研究センターのサイクロトロン実験施設を中心に、最先端の放射線計測を学びました。短期間ではありますが、まとまった実験を行い、実験ノートをつけ、結果を発表するところまで実施しました。
これにより、実験そのものだけでなく、実験の進め方、データのまとめ方、その発表のやり方などを学ぶことができました。
参加者は3つのグループに分かれ、それぞれの実験を行ないました。用意したテーマは、サイクロトロンを用いて生成した放射性同位体を測定する実験や散乱実験です。
実験には大阪大学の大学院生や大阪大学に来ている留学生のTeaching assistantも参加しました。留学生と身近に接することで、日本での研究生活を知ってもらおうと意図したものです。
見学
参加者は、放射線の応用に興味を持っている学生も多数いたので、放射線の医学利用など応用分野の研究が行われている、若狭湾エネルギー研究センターを見学しました。
見学は大阪大学理学研究科の国際物理コースと共同で行いました。実際に留学生として大阪大学に来ている学生と行動を共にすることにより、大阪大学の研究についても同時に理解を深めることができました。
発表
最終日に、実習の成果の発表会を行いました。
3つの実習プログラムのそれぞれ2グループが、グループ内で分担し、全員が1人10分ずつ実習内容とその成果を発表しました。
測定データの解析や成果のまとめ方は、Teaching assistantを交えグループで議論し、発表の準備を行いました。短期間の実習のため、測定ではうまくいかなかったところもありましたが、それを含めた考察をまとめた発表となりました。
加速器の運転日程と曜日を考えると、実習を一通りこなすにはかなり忙しかったのですが、面接により、選んだ学生たちはみなコミュニケーション力に優れ、グループで熱心にデータの解析や発表の準備を行っていました。
また、前回と今回の参加者から、大阪大学の大学院に3名が入学する予定であり、大阪大学の研究を紹介する良い機会ともなりました。