2016年度 活動レポート 第301号:岡山大学大学院環境生命科学研究科

2016年度活動レポート(一般公募コース)第301号

安全で適正なごみの処理処分やリサイクルを進めるための人材育成

岡山大学大学院環境生命科学研究科教授 藤原健史さんからの報告

太平洋島嶼国では、狭い国土の中で廃棄物の問題が深刻になっているにも関わらず、廃棄物処理の技術者や専門家がいません。

太平洋の島嶼国は、多くの観光客が訪れることで経済的に潤いますが、観光客をもてなすための「ごみ」、すなわち、ホテル、レストラン、観光スポットからのごみが多量に発生します。

島嶼国は海外から製品を輸入して、島内で消費し、ごみは全て埋め立てるため、島内にごみが蓄積してゆきます。低地にある処分場では、大きな台風がやってくるとごみが波にさらわれてしまいます。

安全で適正なごみの処理処分やリサイクルが進むためには、ごみを適切に管理できる人材を育てる必要があります。

そのような理由から、平成28年10月5日~12日に、サモア、フィジー、マーシャル諸島、ソロモン諸島、ミクロネシア諸島から、大学学部生4名と指導教員2名を岡山大学に招へいし、「島社会の廃棄物処理処分を考える」をテーマに廃棄物マネジメント学校を開講しました。

写真1
山上処分場の視察

一般的な廃棄物処理技術を学ぶだけなく、日本の島社会における廃棄物処理を見てもらうことにしました。

瀬戸内海には大小さまざまな大きさの島が浮かび、施設や活動の視察を通して日本の技術や意識が伝わり、日本への留学意欲が湧くと考えました。

以下に視察について説明します。

岡山市内のごみ分別

島嶼国の人々とって、ごみ分別は大変興味のある市民活動です。招へい者は市民の活動を熱心にカメラに収めていました。

写真2
岡山市内の資源ごみ収集の視察

岡山市ごみ処理処分場

生ごみで悪臭漂う島嶼国の処分場に比べて、衛生的でクリーンな日本の処分場は理想の処分場です。なぜ、臭いがしないのか、浸出水なぜ透明なのかなど、多くの質問が出されました。

岡山市東部クリーンセンター

近代的なごみ焼却施設は、学生にとって初めて見る施設です。その規模に圧倒され、日本のごみ処理技術の高度さに感心が示されました。

写真3
東部クリーンセンターの視察

小豆島クリーンセンター・リサイクルセンター

島の小型炉施設の機械と操作について関心が寄せられました。また、手と機械によるリサイクルは、島への適用性があると判断されました。

写真4
小豆島・豊島・淡路島のバス視察

豊島の不法投棄現場

産業廃棄物の不法投棄現場を視察しました。事件の経緯や現在の復旧作業について、説明員の話を聞き、管理や監督の重要性について理解しました。

写真5
不法投棄土壌の前に立つ学生

淡路島洲本町の焼却・リサイクル施設と教育施設

リサイクルや分別の教育施設を視察し、教育の効果や重要性を学びました。

写真6
洲本市教育施設エコエコシアターにて

淡路環境未来都市関連施設

淡路島は、リサイクルやエネルギー化など様々な環境活動をしており、風力発電、小水力発電、「なのはな」プロジェクト、竹リサイクルなどの講義を聞き見学をしました。

学生は島見学を終えて、日本の廃棄物処理の技術と政策が自国に役立つ点について発表し、全体のディスカッションを行ない、有意義な議論でプログラムを締めくくりました。

写真7
学生による視察報告

今後も学生達が興味を持ち続け、将来日本に留学生してくれることを期待する。

JICA関係者やSPREP関係者にプログラムの進行の手伝いを頂きました。御礼申し上げます。

写真8
総括ディスカッション後の記念撮影