2016年度活動レポート(一般公募コース)第300号
セミパラチンスクと広島・長崎・福島の被曝医療に関する国際交流支援
島根大学医学部総合医療学講座特任教授 野宗義博さんからの報告
2017年1月10日から31日まで、島根大学総合医療学講座と島根大学医学部総合医育成センターである大田市立病院にて「世界の被曝問題に関する医療人の育成」をテーマに、さくらサイエンスプログラムのプログラムを実施しました。
今回はカザフスタン共和国のセメイ医科大学からファルハッド先生(心臓外科医)、イェルシン先生(循環器・放射線科医)、アイゲリム先生(心臓循環器内科医)の合計3名の優秀な若手医師、博士課程大学院生を招いて島根大学医学部で乳腺・甲状腺疾患の診断、消化器疾患の診断と治療を中心に三週間の集中講義と医療現場での研修を行いました。
島根大学医学部での研修では、島根大学附属病院の手術室で、最新医療技術を見学してもらいました。
胸腔鏡手術や心臓バイパス手術を中心に、島根県における最新の医療技術を見学されました。
一方、医学部キャンパスにおいては、医学部3年生に対しての特別講義(放射線被曝医療)に参加してもらい、セミパラチンスクの核被曝の現状を、3名の留学生に講演してもらいました。
また、医学部5年生を対象とした外科技術指導の授業にも参加し、縫合、結紮、止血、創部処置の指導もお手伝いしていただきました。
さらに、1月26日に行われた第4回島根セメイ国際シンポジウムにも参加発表の機会も得られ、それぞれの留学生による国際会議での発表も行うことが出来ました。
この会議は、世界の被曝問題を検討する国際会議で、今回も広島、長崎、ウクライナから専門教授を招へいし、今起きている福島原発事故後の健康問題を討論する国際会議です。
この会議で、留学生3名にはそれぞれセミパラチンスクの歴史、被害状況、そして今後の対応策などを発表してもらいました。
また、平和教育実習として、広島市を訪問し、甲状腺クリニックでの外来診察での研修に加え、平和公園の原爆資料館を訪れて、平和学習を受けることができました。
3週間の限られた実習期間でしたが、ほとんど毎日、島根大学医学部付属病院と島根大学医学部総合医育成センターである大田市立病院での医療実習に参加することができました。
午前中は外科外来実習し、午後は手術室での外科手術に参加し、大学病院と地域医療の両方を体験されました。また、講義活動では6回のミニ医学カンファレンスにも参加することが出来、最新の医学情報を研修されました。
さらに、近郊の小学校に出向いて、5年生の学生たちに命の大切さを教える授業にも参加し、そこでカザフスタンの国の紹介を英語で行って、小学生たちに英会話の楽しさを体験させてあげることが出来ました。
研修の合間に、島根県の名所、旧跡である出雲大社、松江城を訪れる機会もあり、有用歴史体験も出来ました。その上、雄大な日本海、広大な三瓶山の冬景色も楽しみ、夜は温泉と新鮮な魚介類を楽しむ機会もあり、わが国の伝統文化を十分体験され、大都会では体験できない多くの日本文化に接することができました。
多くの患者さん、病院内の多くの部門のスタッフとのコミュニケーションもうまく取れ、充実した研修となりました。
最後に、留学生から、「もっと長く滞在したかった」「日本語会話も実習したかった」という要望もありました。
今回の体験を生かして、本プログラムをさらに充実させ、再び彼らを日本に招待し、彼らの医療侍術のレベルアップと、医学研究者としての道を歩むべく探究心を育成することも考慮し、アジアの若き指導者育成に貢献したいと思います。
今回の体験が、3名の留学生にとって、大きな希望となってくれるものと信じています。