2016年度 活動レポート 第291号:二松学舎大学文学部

2016年度活動レポート(一般公募コース)第291号

医療と科学-東洋医学と西洋近代医学と科学技術の融合

二松学舎大学文学部からの報告

二松学舎大学では、2016年11月29日~12月8日の10日間、中国・浙江工商大学、北方工業大学の大学生・大学院生10名と引率教員1名を日本に招き、「医療と科学-東洋医学と西洋近代医学と科学技術の融合」をテーマに交流を行いました。

今回のプロジェクト実施にあたっては、北里大学、日本科学医療大学にも協力を仰ぎ、文系・理系の枠を超えた多角的な視点から、医療と科学、またそれらと関わる文化・生活についても広く考える試みとなりました。

具体的な滞在スケジュールは、以下の通りです。

<1日目>

入国

<2日目>

オリエンテーション
講義①「日本文化論①」

<3日目>

講義②「日本文化論②」

<4日目>

日本科学未来館見学
浅草視察

<5日目>

講義③「日本文化論③」
講義④「日本文化論④」

<6日目>

キッコーマン工場見学
講義⑤「医学と科学②」

<7日目>

講義⑥「東洋医学史」(北里大学)
東洋医学資料展示室(北里大学)見学
講演「ノーベル賞受賞者大村智先生について」(北里大学)

<8日目>

弓削田醤油工場見学
講義⑦「臨床工学論」(日本科学医療大学)

<9日目>

講義⑧「医療と科学①」
講義⑨「科学史」
講義⑩「日本の近代と大学」
修了式・レセプション

<10日目>

帰国

 

まず一連の「日本文化論(①~④)」の講義を通じて、日本社会における文化と科学の関係を、いくつかのトピックを取り上げながら通観することを試みました。

具体的には、百人一首にみえる歌語「藻塩」と現代の製塩法とのつながりや、近世期の木版印刷物と草双紙の関係、近代の科学技術(鉄道や火葬場)の導入による習俗(恵方参りや野焼き)の変化などを概観することにより、質疑応答も活発に行われました。

行程に博物館や工場見学を組み込むことにより、科学技術と文化や生活との関わりをよりリアルなものとして学んでいきました。

「日本科学未来館」では、「テレノイド」やヒューマノイドロボット「ASIMO(アシモ)」の実演を見学するなど、科学技術の最先端に触れる体験や、私たちの身近な生活環境における科学技術の働きと、未来型のエネルギー技術の展示などを学びました。

写真1
日本科学未来館にて

「キッコーマン工場」や「弓削田醤油工場」では、伝統的な醤油作りの知識を得ると共に、現代的に機械化された製法についても間近に見聞できたことで、学びを深めました。工場内で賞味した醤油アイスクリームなども珍しかったものか、学生たちにも印象深かったようです。

写真2
キッコーマン醤油工場見学
写真3
弓削田醤油工場見学

工場見学以外にも、浅草(雷門、仲見世通り、浅草寺、浅草神社周辺)や神保町界隈、永田町や飯田橋周辺などの散策を講義の合間に行い、現在進行形の日本文化に触れる貴重な機会をもちました。

写真4
都内視察(浅草見学)

このような学びを準備としながら、「医療と科学②」では戦後日本の科学の夢がアニメーションとして表現されていたことを指摘し、医学と関連するAI、ロボット型兵器、サイボーグとに分けられるSFアニメーションの歴史的展開を説明しました。

そうした科学の夢(または医学の夢)が、現在の医療科学に接合していることについて講義を行うことで、以降の医療科学関係の学習をより多角的な視野から考えました。

北里大学では、日本漢方の成立過程について中国医籍が与えた影響と、新出資料(宋版『孫真人玉函方』)の紹介や、東洋医学総合研究所東洋医学資料展示室の見学も併せて行うことで、展示室の医学史料を通した、日中の漢方の歴史について理解を深めました。

写真5
北里大学での授業

その後、「ノーベル賞受賞者大村智先生について」と題し、北里研究所の所長も務めた2015年ノーベル賞受賞者大村智氏の業績、および半生についての講義と、受賞にあたって評価された「イベルメクチン」の有用性、社会的貢献度についての講演をいただきました。

また日本医療科学大学においては、「臨床工学論」の講義を受講しました。臨床工学という新しい学問分野の説明を行うために、日本における医療科学の歴史を概観し、医学と工学の結びつきについて具体例を挙げながら解説が行われました。

写真6
日本医療科学大学での授業

その後、日本医療科学大学生たちと一緒に注射器具の扱いや、その他医療用具類の実習の体験をしました。医療現場において必要とされる具体的な技術や知識について、学生たちと交流を深めながら学べたことは、大変に新鮮な経験となりました。

二松学舎に戻り、「医療と科学①」として、古代中国における漢方の歴史を踏まえた日本の漢方受容と発展について、「科学史」では江戸時代を対象とした(天文地理学‐暦、測量事業‐、軍事学‐砲術、蒸気機関開発‐の二系統からの紹介)、日本独自の近代科学の黎明期について講義を行いました。

写真7
講義風景

最後に「日本の近代と大学」として、医学を含む科学的な領域が、近代日本と大学設立というパラダイム変換のなかで成立していくことを、教育制度史的な観点から解説を受けました。

行程最終日の前夜には、修了式・レセプションで10日間の振り返りと共有を行いました。

写真8
修了式

滞在中は「九段」にキャンパスを構える二松学舎大学の立地性を活かした、郊外学習を取り入れることで、周辺の名所・旧跡、文化施設などにも積極的に出向き、有意義な日本体験をすることができました。

最後に、貴重な機会を与えて頂きましたさくらサイエンスプログラム、ならびにプログラムに快くご協力頂きました全ての方々および機関に、感謝申し上げます。