2016年度活動レポート(一般公募コース)第251号
生物資源環境学入門コース―アジアのフィールドの多様性と研究
東京大学アジア生物資源環境研究センターからの報告
人口増加と経済成長を続けるアジアでは環境破壊のリスクが恒常的に高く、森林、農地、沿岸域など環境の多様性を踏まえて、環境修復技術、環境調和型の生物生産技術を構築することが必要とされています。
このような問題に関心を持つアジアの優秀な青年に対して、生物資源環境学の最先端を紹介し、持続可能なアジアの発展に対する理解を深め、専門的研究への動機付けを与え、さらに参加者間での交流のきっかけも作るという趣旨で、2016年10月20日から28日に、さくらサイエンスプログラム科学技術体験コースAとして、東京大学アジア生物資源環境研究センター(ANESC)が中心となってプログラムを行いました。
アジアの7か国の8機関(タミルナードゥ農業大学(インド)、ベトナム国立農業大学(ベトナム)、海洋水産研究所(ベトナム)、カンボジア農業開発研究所(カンボジア)、フィリピン大学(フィリピン)、マラヤ大学(マレーシア)、チュラロンコン大学(タイ)、南京農業大学(中国))から、10名の向学心旺盛な若手研究員・大学院生(男性4名、女性6名)が参加しました。
アガロースを栄養源にしているバクテリアについて研究している院生、ダイズのストレス耐性育種の勉強をしている院生、沿岸生態系管理や農業開発研究プロジェクトに従事している若手研究者もいました。
プログラムでは、ANESCの研究室を見学し、4つの研究プログラム(環境修復プログラム、地球規模環境問題対策プログラム、持続的地域資源利用プログラム、有用遺伝資源開発プログラム)の説明を聞いたのち、富士山植生試験地を見学し、植生の回復と菌根の役割に関する生態学的な研究現場を視察しました。
また、農学生命科学研究科の3つの附属施設の見学も行いました。富士癒しの森研究所では、新型薪割機を実演し、紅葉の美しい富士山麓森林生態系を視察しながら、木材の利用についても説明を受けました。
生態調和農学機構では、通常の温室とエネルギー節約型の温室を見学し、レタスとイチゴ、トマトの比較の説明を聞きました。また、武蔵野の草地の植生回復試験の見学も行いました。
田無演習林では、演習林の歴史に関する講義を受け、観測タワーや気象計、様々な樹木や苗圃の見学を行いました。
また、大学院の演習にも参加して、持続可能な農林水畜産業の様々な側面について、また大学附属施設の役割について、博士課程の留学生や日本人TAらとともにディスカッションをしながら、自分の学業・研究を紹介して、交流を深めました。
また、日本科学未来館(江東区)を訪問し、地球環境問題や、人工ロボット、未来の生活生存環境について見学したり、大学周辺の下町を散策したりもしました。
将来の留学や研究での再来学への動機も高められ、寝食を共にした濃密なプログラムを通じて、参加者の間での交流も深められました。
ANESCメンバーと参加者、また参加者間の交流がFacebookページ等を通じて今後も継続されることを期待しています。