2016年度活動レポート(一般公募コース)第205号
考古学と自然科学分析分野における日韓文化交流
島根大学法文学部准教授 平郡達哉さんからの報告
島根大学法文学部では、さくらサイエンスプログラムが採択され、平成28年8月22日~27日の期間、韓国の国立釜山大学校考古学科の教員・学生11名(教授1名、大学院生9名(博士課程1名・修士課程8名)、学部生(4回生)1名)を招へいしました。
この事業では「考古学と自然科学分析分野に関する研究と島根大学生との文化交流」をテーマとし、日韓における考古学とこれに関連する自然科学分析の研究成果と課題を、日韓の学生同士の合同セミナーで発表・討論し、博物館見学・遺跡踏査を通してさらに理解を深める事、そして日韓の学生間の交流の機会を設ける事が目的です。
以下、本プログラムの具体的内容について報告します。
来日初日は、釜山から福岡・広島を経由して松江までの移動に費やし、来日2日目には島根大学でのガイダンスを受けました。その後さっそく近隣の博物館見学(鹿島町歴史民俗資料館)・遺跡踏査(堀部遺跡・田和山遺跡)に出かけました。
来日3日目には、島根大学内において、今回のプログラムの中心である、日韓の学生さんたちによる合同セミナーを開催しました。
テーマは「日本列島・韓半島における青銅器文化研究と自然科学分析研究の成果と現況」で、日本と韓国での考古学研究・調査成果および青銅器に対する産地分析に関する新たな知識・情報を相互に得る貴重な場となりました。
当初は、大学院生が主軸をなす韓国側からの質問が続きましたが、その姿をみてか、島根大学側の学生(学部生のみ)もすこしずつ質問を投げかける場面が見られました。
セミナー終了後には懇親会を開き、歓談しながらの情報交換や、学生さん同士の交流が深めることができたことも今回のプログラムの成果のひとつと言えます。
来日4・5日目は島根県にある弥生時代の代表的な遺跡と博物館を訪問しました。
特に、出雲市の荒神谷遺跡、雲南市の加茂岩倉遺跡は、銅剣・銅矛・銅戈が大量に埋納されていた遺跡として全国的にも知られており、韓国で考古学研究に携わる人々にもその名が知られています。
考古学研究の基本である「現地に立つ」ことで、実際の遺跡の立地・周辺環境を自らの眼で確認しました。
この両遺跡の出土遺物が展示されている島根県立古代出雲歴史博物館では、交流・広報課長から詳細な説明を頂き、韓国側からの質問も出て、実際の遺物を前にして具体的な議論を行いました。
また、島根県の先史・古代文化を理解するうえで重要な遺跡・遺物を見ることができる、出雲弥生の森博物館・西谷墳墓群、八雲立つ風土記の丘資料館も見学しました。
その後、大学へ戻り修了式を行い、全員が修了証書を授与されました。
研究以外の部分では、韓国側参加者全員が初めての島根訪問でしたが、宍道湖周辺の散策、松江城天守閣からの展望など、都会とは異なる静かな雰囲気がとても気に入ったとのことでした。
島根大学の学生さんたちにとっても、日頃直接触れる機会の少ない海外の調査・研究成果に接しただけでなく、同年代の友人ができたことは、刺激になるとともに、相互の文化を理解するきっかけになったと思われます。
最後に、今回のプログラムを実施するうえでご協力いただいた各機関の方々に、改めて御礼申し上げます。