2016年度 活動レポート 第196号:福井大学学術研究院工学系部門

2016年度活動レポート(一般公募コース)第196号

原子力人材育成のための国際交流プログラム

福井大学学術研究院工学系部門からの報告

2016年9月25日から10月2日までの8日間の日程で、ベトナムの学生と若手教員の招へい事業を実施し、電力大学から若手教員3名、学部学生5名、中部電力短大から若手教員3名の合計10名が参加しました。両校は福井大学の協定校であり、原子力工学における人材育成を共同で実施しています。

本事業では日本で原子力を学びたい学生と、博士号取得を目指す若手教員を招へいし、福井大学における原子力教育を体感してもらうもので、本年度は通算で3年目の実施となります。

初日、電力大学参加者は関西空港から、中部電力短大参加者は小松空港から入国し、お昼前にJR福井駅に到着しました。教員が出迎え、昼食を取った後、福井市内を散策しました。福井市を代表する日本庭園である養浩館庭園を見学し、旅の疲れを癒しました。

2日目は研修の初日として、開講式に始まり、福井大学への留学ガイダンス、および中島恭平特命助教による特別講義「放射線計測とニュートリノ観測」を聴講しました。午後からは、福井大学の研究設備を見学した後、福井大学学生との交流会を実施しました。交流会では互いの研究内容や自国の文化を紹介し、和やかな雰囲気の中で情報交換を行ないました。その後、学生と教員を交えて、生協食堂で懇親会を行い、交流を深めました。

3日目は午前中に原子力基礎実験として、2班に分かれて、電子の比電荷測定実験とガンマ線測定実験を実施しました。ベトナムの学生が真剣に議論しながら実験に取り組んでいたのが印象的でした。午後からは、福井県立藤島高等学校に場所を移し、高校生との交流会を実施しました。高校生からはSSH事業における研究成果が紹介され、活発な質疑応答が行われました。ベトナムの学生からは自国文化の紹介があり、高校生はベトナムへの理解を深めました。

4日目は福井の文化体験として、午前中に永平寺を見学し、午後は越前和紙の里において、和紙作りを体験しました。

5日目からは場所を敦賀キャンパス(国際原子力工学研究所)へ移し、原子力の概要を学びました。午前中は若狭湾エネルギー研究センターを見学し、加速器の概要を学びました。午後からは敦賀キャンパスで、研究所の紹介に続き、渡辺正教授による特別講義「原子炉の安全システム」を聴講しました。その後、所内の放射線計測装置や材料分析装置などを見学しました。

6日目は、午前中に福井県原子力環境監視センターとその測定設備(モニタリングポスト等)を見学し、午後は関西電力美浜発電所を見学し、原子力の現場を体感しました。福井県の原子力関連施設を直接見ることにより、ベトナム人参加者は目を輝かせていました。

7日目は大阪に移動し、午前中に大阪城を見学した後、午後から大阪市立科学館を見学し、日本の科学の歴史を学びました。そして翌日、関西空港からそれぞれの帰路につきました。

3年目の実施ということもあり、実施内容が吟味され、時間配分も適切であったと思われます。アンケート結果では、特に不満は挙がっておらず、好意的な意見がほとんどでした。

本事業は平成28年度から3ヶ年計画であり、あと2年継続します。ベトナム政府が原子力発電所建設を白紙撤回したこともあり、ベトナムにおける原子力人材育成の今後は不透明ではありますが、学術的な重要性を考慮して、今後も密度を上げて、本事業に取り組んで行きたいと思います。