2016年度活動レポート(一般公募コース)第193号
インドネシア気象機関若手研究者が海大陸域の観測データ管理を学ぶ
海洋研究開発機構からの報告
海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)では、インドネシアの気象・気候・地球物理庁(以下、BMKG)の若手研究者5名(随行者を除く)を招へいし、2016年9月26日~10月1日の日程で、さくらサイエンスプログラムのプログラムを実施しました。
2017年7月から2年間の予定で、インドネシアを中心とする海大陸域の気象・気候変動の理解と全球への影響評価を目的とした国際集中観測プロジェクト”Years of the Maritime Continent”(海大陸研究強化年、英語を略してYMCと呼んでいます)が計画されています。
JAMSTECはこのプロジェクトの発案機関の1つであり、またBMKGもメンバーとして参画しています。
インドネシア国内における気象、気候に関する責任機関であるBMKGでは、通常観測データを取得後すぐに予報などの目的で使用していますが、YMCにおいては取得されたデータを研究に用いるために、より高精度なデータとするための品質管理を要します。
そこで、科学的ニーズに耐えられるデータ取得に向けた、その意義を理解してもらうことを目的として招へいしたものです。
プログラム初日は、JAMSTEC本部(神奈川県横須賀市)において、深海調査研究船「かいれい」、無人探査機「ハイパードルフィン」等の見学を実施し、2日目からJAMSTEC研究者による海大陸における気候学や観測データの解析手法等に関する講義を実施しました。
招へい者のみなさんはとても積極的な姿勢で受講され、講義中の質問、また議論も多く、すべての講義で予定の時間をオーバーするほどでした。
YMCに参画する研究者や国際調整等を担当する部署長等も参加する交流会も行いました。
3日目は横浜研究所(神奈川県横浜市)において、地球温暖化予測等に活用されているスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」等の見学や、2日目に引き続き研究者、技術者による講義を実施しました。
プログラム後半の4日目、5日目には、JAMSTECが保有する深海映像や資料等の電子化を行い、海洋・地球環境情報の収集・加工・提供を行う拠点である国際海洋環境情報センター(GODAC 沖縄県名護市)を訪問し、データ処理技術等について学んでいただきました。
GODACは、上述のとおり本部等がある神奈川県から遠く離れていますが、データを送受信する技術やデータをアーカイブする機器、そしてそれらを活用する技術者がいることで、その役割を果たしています。
こうした体制についても理解してもらえたことは、多くの島々で構成されるインドネシアの参考になったのではないかと思います。
プログラム終了後の招へい者アンケートでは「データ管理について学ぶことができ、貴重な経験になった」、「得られた知識をインドネシアに戻って役立てたい」などの嬉しい回答をもらうことができました。
受入機関としても、未来を担うアジア地域の若手研究者と「顔の見える」交流を行うことができ、大変有意義なものとなりました。