2016年度活動レポート(一般公募コース)第183号
日本の安全で環境に配慮された農業、食品生産の取り組みを学ぶ
国際環境技術移転センターからの報告
(公財)国際環境技術移転センター(ICETT)では、中国甘粛省より9名の研究者、行政官らを招へいし、11月13日~20日の8日間に渡り、「環境配慮型農業及び有機食品生産促進」をテーマとした交流プログラムを実施しました。
中国の北西部に位置する中国甘粛省は、多様な気候の下で耐乾性作物の生産を中心とした農業が営まれており、その農作物は主に中国国内へと流通しています。
近年では、国内外からの安全で栄養価の高い健康的な食品への関心の高まりを受け、工業活動が他地域と比較すると活発ではない同省の、農村地帯での環境配慮型農業や有機食品生産の実施に期待が寄せられています。
参加者らは省内の大学にて農業分野や食品生産分野の研究活動を行う研究者、省内で新たに信頼性の高い有機食品認証制度確立を目指す行政官で構成されました。
プログラム冒頭では日本の農業、食品に関連する法制度を学び、社会のニーズ変化に応じて基準が段階的に厳しいものとなり、新たな制度が構築されてきたことを理解しました。
また中盤から後半にかけては、有機食品を生産する食品工場や、科学技術を利用した農業施設を見学し、従事者の苦労や工夫、甘粛省での導入に係る課題などについて意見交換を行いました。
有機食品は中国国内では需要は高いものの、「値段が高い」、「中国の認証制度は信頼性が低い」などの理由から、流通量はまだ少ないとの事です。
このプログラムで学んだ生産従事者の工夫、行政の取り組みを通じて、今後甘粛省での生産活動や認証制度の確立が促進されることが大いに期待されます。
プログラム開講式の代表者挨拶では、「環境に配慮され、尚かつ生産性の高い日本の農業活動や食品生産について、従事者との交流から多くを学び吸収したい」と述べられました。
下水汚泥を活用した農作物の生産は、汚泥処理に課題を抱える甘粛省でも導入可能な手法です。また農村部などの下水処理施設の普及が立ち遅れている地域でも、農業への利用をきっかけに処理手法が見直される良い機会となるのでは、との期待の声が上がりました。
七福醸造(株)では、有機調味料を生産しています。
原材料の選定や生産工程のみならず、工場内の清掃活動まで、有機認定工場としての取り組みについて説明いただき、質問を交えながら活発な意見交換が行われました。
中国から輸入された農作物や食品は、日本でも広く一般家庭の食卓で消費されており、中国での取り組みは私たち日本人の食生活にも大きく影響します。
今回の日本での経験を活かし、今後、中国での農業活動や食品生産が、環境や安全により配慮されたものとなることが大きく期待されます。
本プログラムでは、東海地域から関東地域までの、農業や有機食品生産に関わる関係機関の皆様にご対応いただきました。
ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。