2016年度 活動レポート 第162号:農研機構食品研究部門

2016年度活動レポート(一般公募コース)第162号

食品の衛生検査法を学ぶ短期セミナー

農研機構食品研究部門 稲津康弘さんからの報告

カンボジア国内では、食中毒菌が付着した食品を食べたことによる食中毒が日常的に起こっています。その対策のための研究施設も専門家も不十分であることから、最近、カンボジア王立農業大学(RUA)が実験室を整備し、当機関も同大学とのMOUに基づいて、種々の協力を行ってきました。

この度、当機関がさくらサイエンスプログラムに採択されたことから、RUAの若手大学講師2名と大学院生2名を招へいし、食品の基本的な衛生検査法を学ぶ短期セミナーを実施いたしました。

参加者は2016年11月14日の朝に来日し、同日午後から11月22日午後までの平日に、実験等を行いました。

具体的なテーマは「食品の大腸菌、サルモネラおよび腸球菌検査」、「食品に含まれる大腸菌群の同定」および「細菌の抗生物質耐性スペクトルの測定」の3つで、いずれもRUAにおいて実施可能な内容となっています。

帰国後、すぐに使用する必要がある実験技術を短期間で習得する必要があるため、参加者はかなり真面目に取り組んでおりました。

細菌検査の実習
細菌検査法の解説

なお15日~16日は中央大学理工学部の学部生2名もプログラムに参加し、RUA学生等と交流を深めました。

同時期にダッカ大学のMd. Latiful Bari教授(元FAO / WHO Codex委員会事務局員)が当研究室に滞在していたことから、彼を交えて発展途上国における食品衛生対策について議論を行いました。

わが国の科学技術一般、および日本文化に関する知見を深めていただくことも事業目的の一つであることから、11月16日に農研機構 食と農の科学館にて、わが国の農業研究の現状について学ぶとともに、同 植物工場つくば実証拠点を訪問し、商業規模の巨大植物工場によるトマトやキュウリ等の栽培試験を見学いたしました。

食と農の科学館見学
植物工場見学

19日にはつくばエキスポセンターを訪問し、わが国のナノテクノロジー、宇宙開発等に関する研究を学びました。

また20日には、東京国立博物館においてわが国の歴史文化を学ぶとともに、浅草寺、東京スカイツリー等の名所の見学を行いました。

つくばエキスポセンター見学
東京国立博物館見学

タイやインドネシアと比較すると、カンボジアではまだ日本という国の様子自体があまりよく知られていないようでもあるので、このような形での科学技術、あるいは日本文化の紹介は、それなりに意義があるのかと思われました。

終了時アンケートによると、参加者4名ともに本プログラムに対する満足度、および再来日の希望が極めて高いことが示されています。

彼らは帰国後、今回修得した技術を用いてカンボジア国内の食品の衛生検査を実施する予定であり、今後、技術的人材育成を通じた国際貢献のよい例となることが期待されます。

最後に、本プログラムに資金的援助をいただいたさくらサイエンスプログラムに感謝いたします。