2016年度活動レポート(一般公募コース)第139号
日本型STEM教育に関する先進的実践研究のハンズオン型研修
埼玉大学からの報告
埼玉大学では、3年間のさくらサイエンスプログラム初年度として、10月1日から10月9日の日程で、タイ全土からSTEM教育に携わる若手教員を日本に招へいし、プログラムを実施しました。
このプログラムでは、日本の教育現場を知ってもらい、日本型の総合学習に根ざしたSTEM教育の考え方を持ち帰ってもらうこと、そして将来、留学や仕事を目的として再来日してもらえることをねらいとしています。
本校では既に、2015年度にもタイの教育省外郭団体IPST(The Institute for the Promotion of Teaching Science and Technology)の若手研究者6名と、IPSTがタイ全土で展開しているSTEMセンターから若手教員5名を、さくらサイエンスプログラムにより招へいし、2016年2月15日から21日まで研修を行っています。
近年注目されるSTEM教育ですが、日本ではすでにそのベースにある教科横断的な課題解決型の学びを、総合的な学習の時間として学習指導要領のもとで、正規のカリキュラムとして20年以上実践してきた経験があります。
2月に実施したプログラムでは、今、世界が注目する日本の総合学習を体験的に学び、意見交換をする国際ワークショップを行いました。
このプログラム終了後、送り出し機関であるIPSTより、正式に埼玉大学STEM教育研究センターとタイの若手研究者の交流を促進する連携研究事業を開始したいとのオファーを受け、2016年10月より連携研究活動をスタートしました。
それに合わせて、タイの若手教員および若手研究者を組織的に日本に派遣し、その後の日本への留学を促進することを目的として、今回3年間のさくらサイエンスプログラム事業として応募し、採択されました。
今回のプログラムの概要は下記のとおりです。
第1日目
日本の先端技術、特にロボット技術について、東京九段下の科学技術館とお台場の日本科学未来館の見学をすることによって、実際に触れたり、参加したりしながら知ることができました。特に、人型ロボットの最新型アシモの動きにはみなさん驚嘆していました。日本独自の科学技術に対する姿勢に、文化の違いを感じ、未来の科学技術社会について各自が考えを深めるきっかけとなりました。
第2日目〜第4日目
埼玉大学を会場に、日本型のSTEM教育の思想を知ってもらうための講義と実習を行いました。埼玉大学教育学部で、生活科・総合学習に関する研究をされている宇佐見香代教授から、ご自身のフィールドワークの様子など豊富な事例を紹介していただきながら講義いただきました。
続いて、本ワークショップの企画、コーディネータでもある野村泰朗准教授から、自身が実際に学校現場と連携して実践研究をしている総合的な学習の時間の授業を、参加者にも実際に体験してもらいました。
社会の問題を、理科や算数で学んだことがらを使って解決策を探っていき、実際に、解決案をものづくりをして表現し、プレゼンテーションをして相互評価するという一連の流れを体験してもらいながら、指導のポイントを順番に検討していきました。
第5日目
野村准教授が関わっている、さいたま市内の県立高校および川口市内の公立小学校を訪問し、実際に情報教育の授業や総合学習の授業の様子を見学しました。参加者は、日本の公立学校の質の高さに驚いていました。校長先生や担当教諭と参加者の間での、お互いの学校システムの違いについての質疑応答も盛り上がりました。
第6日目
この日は、街に出て、日本文化について知るとともに、ロボットづくりから少し離れて、日本の伝統工芸やユニークなものづくりを体験しました。
午前中は、浅草を散策し、浅草寺や神社を見て回ることにより、日本の文化への理解を深めました。さらに、海外からの観光客にも人気の食品サンプルづくり体験を行いました。また、午後は、御徒町に移動して、商店街を散策しました。そこで、江戸風鈴づくりの体験も行いました。
第7日目
2日目〜4日目に続き、総合的な学習の時間を体験するワークショップを続けました。日本では一般的に使われている理科の教材が、タイの先生方はとても新鮮に感じられたようで、黒板と教科書が一般的なタイの学校で、ぜひこのような体験的な教え方をもっと取り入れたいと熱心に教材研究していました。
午後は、最終日に予定している、日本の子どもたちを対象にしたSTEM教育をテーマにした模擬授業の準備に取り組みました。ここまでに研修してきたSTEM教育の授業設計の考え方を、実際に自分で授業を作ってみることによって確かめるために、グループごとに検討を重ねました。
第8日目
ワークショップ最終日は、STEM教育研究センターに週末通ってものづくりの活動をしている小学生を対象に、参加者に模擬授業をしてもらいました。
3つのグループに分かれて、実際に、子どもと一緒に一連の活動をしてみることで、指導のポイントを体感してもらうことがねらいでした。参加者は、さすが学校の先生や教育研究者だけあって、子どもたちとの接し方には慣れているものの、子どもが考えている場面でついつい手や口を出してしまい、苦笑いしながら、STEM教育の指導方法について熱心に学んでいました。
その後、模擬授業の様子をビデオ映像で振り返りながら、授業研究を行い、STEM教育の指導上のポイントについて話し合いました。
今回、日本の先端的な教育について、タイの教育関係者に知っていただく機会を作ることができ、3年間の事業の初年度として、非常に有意義な事業となりました。
今後、タイに戻っての継続的な実践のサポートなどを送り出し機関であるIPSTと連携して進めていく予定です。
以下に、特に具体的にワークショップの進め方に対する意見までいただけた参加者からのコメントを一つ紹介します。
学校教育の抱える問題でもありますが、このワークショップにて時間を忘れてとことん突き詰めていく活動を体感したからこそ、その結果時間を気にして少し不安も感じたというこのコメントがまさにこれからの教育の課題でもあり、教育者、研究者のチャレンジでもあるとあらためて感じました。
“I am delighted have been chosen to attend in this training program. I learned more about your instructional design model. And I think this model can help teacher to find out their theme or topic. For overall of this training its well. But some process of training is very shortly、 so participants can't connect form lecture to activity、 and sometime participants would like to know more about "what's next step for activities"、 because when participants know more information、 I think they can control the time and they can do activities on the time. So on the training program schedule should have specific time. (I think、 may be it's Thai culture、 they would like to know more information for prepare themselves before next activities.)”