2016年度活動レポート(一般公募コース)第136号
大腸菌のガンマ線照射を通じて放射線滅菌の基礎を学ぶ
大阪府立大学地域連携研究機構放射線研究センターからの報告
2016年9月5日~9月10日の日程で、ベトナム、ダラット大学の大学生3名と教員2名を迎えて「微生物のガンマ線照射により放射線の生物影響と放射線滅菌の基礎を学ぶ」をテーマに、さくらサイエンスプログラムの科学技術研修プログラムを実施いたしました。
本プログラムの主旨は、ベトナムの若い学生世代が、東南アジアにおいて普及が著しい、食品照射の基本である微生物の取り扱いと、放射線照射による生残率の評価を目指して、大腸菌を実験材料として基本的な培養法を学ぶこと、さらに、得られた菌体に大阪府立大学のコバルト-60ガンマ線照射を行うことによって、生残曲線を作成し、放射線の生物影響と放射線殺菌の基本的な考え方を学ぶことです。
彼らはベトナムの原子力産業や放射線利用産業の次世代を担う人材と目されるため、今回の研修によって、放射線利用を進めるうえでの研究開発や実用化の現状を実際に体験できたことは、彼らにとっては有意義なことでした。
また、これらの作業を同じ目的を持つ本学の学生とともに共有できたことで、ベトナムとの今後の技術協力の発展に資することが期待されます。
引き続き午後からは、いよいよ放射線殺菌を行う大腸菌の試料調製が始まりました。大腸菌を培養するための培地の作成と、大腸菌を増殖させるための前培養を行いました。最初は慣れないクリーンベンチ内の無菌操作の実習ではありましたが、当研究室のサポート役の大学院生の手厚い指導のおかげで無事終了いたしました。
翌日には一晩増殖させた大腸菌の培養液に、大阪府立大学放射線研究センターのコバルト-60ガンマ線照射プール内でガンマ線を照射しました。照射後の生残菌数を調べるために、培養液を希釈して、シャーレに調製した寒天培地に添加しました。
最終日にシャーレ上に現れた大腸菌のコロニーを数え、ガンマ線照射後の生残率を求めました。ガンマ線の線量と生残率との関係は、全員見事な相関性を示し、放射線量の増加に伴い生残率は減少し、最終的に大腸菌が滅菌できることを学びました。
最終日の前日には、滋賀県甲賀市にある我国有数のガンマ線照射施設を持つ、(株)コーガアイソトープを訪問し、放射線滅菌の実用照射の実態について体験することができました。
ベトナムの原子力工学や放射線工学の次世代を担う若い学生に、放射線の基礎とその利用について学んでもらい、放射線滅菌のイメージを伝えられたことは意義深かったと思います。
同時に、ベトナムと日本の学生間のコミュニケーションが深められ、共同作業を通じた相互交流が成功したことは、日本人の学生にとっても、現在学んでいる放射線利用の重要性を実感できる機会になり、彼らの国際的な技術協力に対するモチベーション向上を感じることができました。