2016年度活動レポート(一般公募コース)第97号
理論と実験の融合した生命動態研究を通した国際交流
広島大学からの報告
広島大学大学院理学研究科クロマチン動態数理研究拠点(RcMcD)では、2016年8月29日~9月7日、さくらサイエンスプログラムの支援により、台湾、ベトナムから学生8名、教員1名を招き、国際交流を実施しました。今回のプログラムは、国際交流と同時に、数理科学、生物学、化学などの分野の枠を超えた学際交流も意図して計画されました。
到着の翌日、まずは理学研究科数理分子生命理学専攻が他大学と共催する合宿研修に参加しました。総勢100名を超える、専門分野も様々な参加者の中で、台湾、ベトナムの学生も、大学院生を中心に、自身の研究のポスター発表などを行いました。
続いて、RcMcDが主催する国際サマースクールへ参加しました。本拠点が研究を進める、「細胞核の中で、遺伝子DNAとタンパク質との複合体(クロマチン)がどのように動き、それがどう機能と関わっているのか」という、まだ多くの謎の残るこの分野を題材に、理論と実験の融合した生命動態研究を体験しました。
4日間と短い期間ながら、装置見学や簡単な実験から、顕微鏡観察で得られた動画像の処理、数理的な解析やシミュレーションまでを、3~4名ずつ6つのグループに分かれて行いました。最終日には、解析結果や学んだことなどに関して、グループごとに英語で発表しました。
今回、さくらサイエンスプログラムから御支援頂いたことで、参加学生19名中12名が外国人という、国際サマースクールの名に恥じない行事とすることができました。まだ英語での議論や発表の機会が少ない、日本側の学部生にとっては、初めは戸惑いもあったようですが、発表の準備に取りかかる頃には活発な議論が見られました。彼らにとっても良い機会となったように思われます。
本プログラムは日本の工業技術に触れることも目的としています。企画の際、広島らしい産業は何かと思案し、賀茂鶴酒造(株)とマツダ(株)を訪問先に選びました。
広島大学のある東広島市西条は日本酒の産地として知られており、サマースクールの実習の題材ともなった「酵母」(種類は違いますが)でつながる生命科学の応用でもあることから、実際に酒蔵を訪問して醸造技術に関する説明を受けました。マツダミュージアムでは、ロータリーエンジンなどの技術に触れるとともに、実際に工場内で自動車が組み立てられる様子も見学しました。
帰国前日には、附属宮島自然植物実験所の協力で、野外観察とセミナーを行いました。弥山の山頂まで登った後に、実験所の敷地まで、動植物を観察しつつ普段あまり観光で訪れることのないコースを歩きました。直前まで台風の影響が心配されましたが、幸いにして天候にも恵まれました。台湾、ベトナムともに暖かい地域ですが、意外な共通点もあるようで、日本側スタッフにとっても驚きがありました。
プログラムの合間に、キャンパス内を巡っての大学紹介を行いました。また、大学院生TAの協力もあり、移動途中や休憩時間に、厳島神社や平和記念公園に立ち寄ったり、お好み焼きを食べたりと、広島らしい体験もできたようです。
すでに研究を進めている大学院生はもちろん、優秀な学部生たちとも、近い将来、学会などで再会し、新たな共同研究などを展開していけるのではないかと、楽しみにしています。