2016年度活動レポート(一般公募コース)第69号
光触媒コーティングをテーマにした国際共同研究
東京理科大学准教授 寺島千晶さんからの報告
インドのプネー大学から平成28年10月2日から同年10月22日までの3週間、優秀な若手研究者・学生を東京理科大学の光触媒国際研究センターに招へいしました。これはさくらサイエンスプログラムの共同研究活動コースにて実施しており、交流計画の主な趣旨は、日印共同研究により、光触媒コーティングをテーマにした国際共同研究への発展を見据えた活動となります。
プネー大学はインド第3位の総合大学で、学生数は50万名ほどになります。この中から、材料科学やコーティング技術に長けた教員2名とポスドク2名、そして大学院生1名の合計5名が来日しました。インド側代表者のProf. Suresh Gosavi先生は物理学専攻で材料科学分野において優れた研究者であり、プネー大学工学部で電子顕微鏡などの管理責任者もされていることから、TEM装置の打ち合わせなどで日本電子株式会社にも足を運んだ経験があるとのことでした。
今回の共同研究は特に、光触媒を中心とした機能性材料の合成とコーティングに関する内容で、来日2日目には双方の情報交換も含めて研究発表会を行いました。ここでは日本側の学生からも積極的に英語によって発表してもらい、情報共有だけではなく、活発な交流をもつよい機会となりました。詳細な研究内容は割愛しますが、ポリカーボネート樹脂への光触媒コーティング、大気圧プラズマジェット法による新規な光触媒コーティング法においては、一定の成果を収めることができました。また、滞在中に議論を重ねた結果、防氷コーティングに関して共同研究を継続していくのがよいのではないかとの意見交換も行いました。
さらに、藤嶋昭先生が代表研究者として採択されている科研費基盤研究B(一般)の研究課題(課題名:日光の社寺を例とした漆塗り建造物と最先端科学技術の融合研究)において、現在、研究を進めいている漆材への光触媒コーティングを体感するために、日光へも訪問しました。日本の伝統文化にも触れてもらい、光触媒コーティングが如何に意義ある研究内容であるかも認識してもらうことができました。この日光訪問を通して、科研費で実施している研究内容が、日本発の光触媒技術と日本の伝統文化との融合を目指したオリジナル研究であると、高く評価してもらえました。
また、研究の合間に、科学技術館も見学してもらい、日本の高い技術力を体験してもうことができました。インドにはない体感型の展示物が多く、非常に楽しんでもらえました。
唯一心残りなのが食事です。ベジタリアン食や宗教食の問題で、こればかりは日本のおいしい料理を堪能してもらうことができず、滞在中にご一緒したレストランなどはほとんどがインド料理屋でした。
帰国の2日前には、本学神楽坂キャンパスにて、藤嶋先生との研究ディスカッションを行いました。滞在中に得られた研究結果をご報告し、今後の研究方針とスケジュールについてアドバイスを頂きました。研究成果を論文にまとめるために不足しているデータを幾つか指摘され、双方にて現在、一生懸命データを取りまとめているところです。
なお、本学独自の取り組みとして、さくらサイエンスプログラムの双方向交流事業を行っております。これはさくらサイエンスプログラムで招へいした相手国に対し、本学から返礼を兼ねて訪問するというものです。これにより本年12月の1週間、本学学生5名を連れて、インドのプネー大学へ行く予定を立てております。それまでに必要な研究データをまとめ、現地にて研究打ち合わせを行い、さくらサイエンスプログラムの成果として論文投稿までもっていくつもりです。また、折角の機会なので、プネー大学の研究環境も見定めて、今後の国際共同研究への発展に向けた、人的交流や研究活動を深めたいと考えております。
最後になりましたが、本交流を通して、インドの優秀な研究者や学生と交流を持てたことは、日本の学生にとっても大きな刺激となり、大変有意義な場となりました。このような交流のきっかけを与えて頂いたJSTさくらサイエンスプログラムに感謝いたします。