2016年度 活動レポート 第59号:筑波大学大学院数理物質科学研究科

2016年度活動レポート(一般公募コース)第59号

微小液滴形成技術でハノイ工科大学の学生と共同研究

筑波大学大学院数理物質科学研究科からの報告

筑波大学大学院数理物質科学研究科では、さくらサイエンスプログラムの支援により、2016年7月18日から8月7日の間、ベトナム・ハノイ工科大学の修士課程1年次に在学中のNguyen Thi Thai氏を受け入れ、微小液滴形成のためのT字型構造を有するマイクロフルイディックデバイスの作製と評価に係る研修を実施しました。

研修期間内にポリジメチルシロキサン(PDMS)による微小流路構造の作製、これに2種類の混ざりあわない液体を用いることによる微小液滴の形成、蛍光顕微鏡を用いたビデオ撮影、およびデータの解析を行い、数値計算の結果と比較しました。T字型流路構造は、厚膜フォトレジスト(感光性樹脂)で形成した型に、PDMSプレポリマーを流し込み、硬化後、これを分離することにより形成しました。流路の二つの導入口のうちの片方からは液滴となる1,6-hexanediol diacrylateを、もう一方の流路からはポリビニルアルコール水溶液をそれぞれシリンジポンプにより連続的に導入しました。蛍光顕微鏡下で液滴の形成過程の1/1000秒の高速度撮影を行いました。撮影した動画を画像解析ソフトで解析し、流路幅や流速を変えた場合の液滴の大きさの変化を調べました。

微小流路作製のための表面処理
微小流路中の液滴の挙動解析

短期間の研修でしたが、事前の準備とThai氏の熱意により、必要なデータは研修期間内にすべて取り終えることができました。今回、Thai氏が希望した特定の実験に集中しましたが、3週間という研修期間を考えると、これは良かったと思います。受入れ研究室ではこの分野の研究を行っていますが、この研修で行った微小流路中での液滴の連続形成は行ってきませんでした。この点、研究室の学生にも良い勉強になりました。

滞在中、同じつくば市内の産業技術総合研究所内のサイエンス・スクエアつくばと筑波宇宙センターの見学も行いました。異分野の最先端の研究の成果を見ることができ、Thai氏は非常に満足していました。

産業技術総合研究所サイエンス・スクエアつくばの見学

特に、筑波宇宙センターでは、国際宇宙ステーションや人工衛星等、ベトナムでは見る機会がなく、Thai氏は興味深そうに見学していました。また、Thai氏は、つくば市内の物質材料研究機構に滞在中のベトナム人研究者とも会って積極的に情報交換を行っていたほか、休日には筑波山の登山に出かける等、活発につくば市内を見て回っていたようです。

ベトナムでは、今回の研修で使用した試作設備の他、評価に用いる小型装置や資材の入手も難しいということを聞きました。ベトナムは非常に親日的な国で、日本に対する期待は大きいです。この点において、今回の研修は有意義でした。このような機会を与えていただき、感謝しています。