2016年度 活動レポート 第33号:神戸大学農学研究科

2016年度活動レポート(一般公募コース)第33号

タイ・チェンマイ大学と微生物に関する共同研究

神戸大学農学研究科からの報告

さくらサイエンスプログラムの支援により、タイ・チェンマイ大学アグロインダストリー学部に所属する学生を招へいし、「科学技術研修コース(2016年7月24日から8月3日)」を実施しました。同学部からは学部学生6名、修士学生2名、引率教員1名が来日しました。

チェンマイ大学は1964年創立で、20以上の学部からなる総合大学で、タイ国においても高い教育力と研究力を有しています。また、同学部は1992年に農学部フードサイエンステクノロジー学科が独立した形で創立され、現在では学部学生約1,300名および修士学生約80名が学んでいます。

神戸大学農学研究科とチェンマイ大学アグロインダストリー学部は2016年2月に学部間交流協定を締結し、その一環として同研修コースを実施することにしました。

招聘学生の選抜基準は、①成績、②英語力、③同学部教員と実施主担当者(竹中 慎治、WEB会議形式での参加)による口頭試問にて、適正と意欲および微生物分野に関する基礎知識の点から優秀な学生を8名選抜しました。また、交流計画のテーマは「タイの土壌より単離した耐熱性微生物とその酵素系の特性解析」としました。

研修は、「微生物酵素の精製と特性解析」と「16S rRNA遺伝子解析による細菌の同定」の2項目について2グループに分かれて行いました。実施主担当者および酵素学に造詣が深いタイ人引率者(Dr. Chaiyaso氏)が実験内容の説明・操作方法のデモンストレーションを行い、タイ人学生が実際に操作やデータ収集を行う形で進めました。その過程で、日本人修士学生(2名)には英語コミュニケーション能力の向上も兼ね、適宜、サポート役を担当してもらいました。

実習・操作説明風景

「微生物酵素の精製と特性解析」では、微生物菌体外酵素(プロテアーゼ)を題材とし、培養液上清を陰イオン交換クロマトグラフィー後、酵素活性測定とタンパク質定量を行い、つづいて、電気泳動による精製度合の確認とN末端アミノ酸配列を目的としたPVDF膜への転写、さらには天然タンパク質の分解について取り組みました。

微生物培養実験
タンパク質量定量実験

タンパク質電気泳動からブロッティング実験

一方、「16S rRNA遺伝子解析による細菌の同定」では、乳酸菌を題材とし、コロニーアイソレーション、ゲノムDNAの抽出、16S rRNA遺伝子断片の増幅と精製、同遺伝子のクローニング、大腸菌形質転換株からのプラスミド抽出、同断片のシークエンスについて取り組みました(遺伝子組換え実験の関係で説明とデモンストレーションのみのステップを含む)。

遺伝子実験操作 PCR増幅断片の確認

両グループとも一連の操作を終了後、精製酵素のN末端アミノ酸配列と16S rRNA遺伝子塩基配列を解析する機器を含む学内共通分析機器類の見学を行い、得られた配列を基にコンピュータ室を利用しながら、BLAST検索と解析法についても講習を行いました。

研修修了後は、参加者たちが河端俊典副学部長を表敬訪問し、アグロインダストリー学部の紹介に続き、タイ人学生代表(Yakul君)による本研修コースの成果についてプレゼンテーションの場を設け、理解度や達成度について確認を行いました。

河端副学部長および実施主担当者を交えた成果発表会

神戸大学農学研究科の近くには、清酒の醸造で有名な灘五郷があることから、醸造酒の中での清酒の特異性や製造法に関して実施主担当者による講習を行いました。また、参加者は全員20歳以上であったことから、本醸造酒・純米酒・吟醸酒の3種について利き酒にも挑戦してもらいました。さらに、到着日を含む日曜日を利用し、神戸およびその周辺について施設見学を行い、港町神戸の地理や歴史についても学んでもらいました。

プロティンシーケンサ―の原理説明