特別寄稿 第27号
中国の科学技術大学の学生が航空宇宙科学技術を学び国際交流プログラムに参加
雷 忠
執筆者プロフィール
- [氏名]:
- 雷 忠
- [所属・役職]:
- 諏訪東京理科大学工学部教授
交流プログラム | |
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1日目 | 中国から来日、茅野市に到着 |
2日目 | 特別講義:「国際宇宙ステーション科学実験」、「次世代超音速旅客機の研究開発」企業見学:諏訪圏工業メッセ2015を見学 |
3日目 | 特別講義:「航空機産業及び航空機の研究開発」、「太陽光エネルギーを利用した無人航空機の設計開発」、大学研究室見学、技術見学:諏訪湖時の科学館儀象堂 |
4日目 | 企業見学:セイコーエプソンものづくり歴史館、自然体験:富士河口湖西湖いやしの里根場 |
5日目 | 技術見学:JAXA筑波宇宙センター、東京理科大学光触媒国際研究センター、火災安全科学研究センター、特別講義:「光触媒について」 |
6日目 | 技術見学:全日空機体工場見学、JAXA航空宇宙センター、特別講義:「JAXAにおける航空技術の研究開発」 |
7日目 | 技術見学:東京理科大学近代技術資料館、科学技術館、日本科学未来館、三菱みなとみらい技術館、修了式 |
8日目 | 帰国 |
実施目的と背景
諏訪東京理科大学は2015年10月16日~23日まで、中国科学技術大学から選抜された学部4年生5名と大学院生5名、教員1名を受入れました。日本の先端科学研究、産業技術を中国学生に理解してもらい、関心を高め、将来、日本との交流活動を促進することを目的として、航空宇宙分野を中心とした日本の教育、科学研究、産業技術に関するプログラムを計画しました。
プログラムの概要
10月17日にオリエンテーションを実施後、河村学長により宇宙開発における研究活動について特別講義を受講しました。午後、諏訪工業メッセに参加し、様々な精密加工機械を見学して、大きな刺激を受けたようでした。夜、宿泊ホテルでオープニングセレモニーを実施し、本学の教員たちと交流を行いました。
3日目に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の次世代超音速旅客機研究開発と、本学で開発している太陽光エネルギーを利用した無人航空機を紹介しました。その後、大学研究室と学生実験室を見学し、実践力を重視した本学の教育現場を説明しました。午後、諏訪湖時の科学館儀象堂に訪ね、自らが腕時計を組み立てました。
4日目の朝、世界的に知られる電子機器メーカであるセイコーエプソン本社を訪問し、企業理念、歴史、未来を紹介して頂きました。また、職業訓練工場で同年代の若者が真剣に加工作業に取り込んでいる様子と優れた精密加工に感心ました。高速バスで東京のホテルに到着した後、同大学校友会の交流会で会食しながら、日本で活躍している先輩たちから人生経験や異国文化などの話しを聞きました。
5日目午前、JAXA筑波宇宙センターを訪問し、日本の宇宙開発技術の最先端を見学させて頂きました。実物大模型の日本実験棟「きぼう」に入り、宇宙服の記念写真を撮影し、宇宙飛行士の気分を体験しました。午後、東京理科大学藤嶋学長にご協力頂き、光触媒国際研究センター、また、日本の安全科学を代表する火災科学研究センターを見学しました。
6日目午前、ANA機体工場見学に参加しました。学生たちは初めて整備中の飛行機、さらに分解された一部の内部構造までも見られて感動しました。午後、JAXA航空宇宙センター(調布市)を訪問し、JAXAの航空宇宙技術について受講し、展示室やYS-11機体や大型風洞や航空機エンジン試験設備やスーパーコンピューターなどを見学しました。JAXA側は中橋理事を始め、各部署の担当スタッフたちから先端的な研究の紹介を丁寧にして頂きました。学生たちも熱心に説明を聞き、質問が相次ぎました。日本の航空科学技術と産業技術のレベル高さに深い印象が残りました。
7日目にまず、東京理科大学神楽坂キャンパスと近代技術資料館、また科学技術館と科学未来館と三菱みなとみらい技術館を訪問しました。科学教育施設を訪問したことがあまりない中国学生にとっては刺激であり、日本の科学教育普及にこれだけ大きな力を入れていることに驚いていました。帰国前の夜に宿泊ホテルで修了式を行い筆者から修了証を手渡され感激していました。
プログラムの成果
中国学生たちはこれらの交流活動を通して、全般的に日本の科学研究と産業技術を見ることができました。今回受け入れた中国科学技術大学の学生たちは、積極的に活動に参加し、特別講義や見学の際に真剣に説明を聞いたり、活発に質問したり、自主的に考えました。訪問先からも高い評価をいただきました。学生たちが全般的に日本に対する理解を深めることができたと思います。
中国学生たちは「素晴らしい科学研究と産業技術を見られて、大変良い勉強になった。ぜひ、将来、日本といろいろ交流活動をやりたい」と語りました。このような活動を通して、改めて中国の若者に日本の科学技術を始め、日本文化や自然環境などを体験してもらい、将来、日中交流の懸け橋になることを期待しています。また、訪問先の日本の方々にとっても中国の将来を担う若者たちとコミュニケーションを行い、中国に対しても理解を深めることができたようです。