特別寄稿 第22号
グループ調査・体験研修の実践で効果をあげる
農学分野における海外学生交流プログラム
大蔵 聡
執筆者プロフィール
- [氏名]:
- 大蔵 聡
- [所属・役職]:
- 名古屋大学大学院生命農学研究科教授
- [氏名]:
- 水口 智江可
- [所属・役職]:
- 名古屋大学大学院生命農学研究科助教授
プログラム日程 | |||
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1日目 | 来日。プログラムガイダンスおよびキャンパスツアー | ||
2日目 | 名古屋大学教員による農学分野の講義 グループでの調査・体験研修のためのグループワーク(計画立案) |
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3日目 | 名古屋大学農学部における研究室実習 | ||
4~6日目 | グループ調査・体験研修 | ||
7日目 | 成果発表会、交流会 | ||
8日目 | 学生グループによる名古屋市内見学 | ||
9日目 | 帰国 |
名古屋大学農学部では、平成27年8月1日〜9日に科学技術振興機構「さくらサイエンスプログラム」の支援を受けて「農学分野における海外学生交流プログラム」を実施しました。本プログラムは、カンボジア王国・王立農業大学およびタイ王国・カセサート大学から学部学生を受け入れ、名古屋大学農学部学生とともに日本の先端農業や農学分野における基礎研究現場を視察・体験研修するものです。本プログラムにより、参加学生は日本の農業の現状を理解するとともに、英語でのコミュニケーションによる三カ国の学生間の交流を通して互いに国際感覚を磨くことができます。
王立農業大学(1964年創立)は、農学分野の9学部からなるカンボジア国立の農学専科大学であり、カンボジアにおける農学分野の教育研究をリードする大学です。また、カセサート大学(1943年創立)は、バンコクを始めタイ国内に複数のキャンパスがある有数の総合大学です。本プログラムのパートナーであるカンペンセーンキャンパスは、1979年にタイ王国初の農学専科大学として設立され、タイ国内外の農学分野の教育研究で先導的な役割を果たしています。
本年度は、両大学学部学生10名に加え各大学負担による派遣学生24名が参加し、名古屋大学農学部学生34名とともに研修を実施しました。本年度の活動状況を紹介します。
1日目
キャンパスツアーを行い、名古屋大学博物館、ノーベル賞展示室などを見学しました。名古屋大学にゆかりのあるノーベル賞の研究業績に触れ、両国の学生の関心をひいていました。
2日目
名古屋大学教員による農学分野の講義を行い、4日目からの「グループ調査・体験研修」の予備知識を得る機会をもちました。その後、三カ国学生で構成されたグループに分かれ、「グループ調査・体験研修」の計画立案を行い、調査項目の設定、訪問先の調査などを行いました。参加学生は、日本人学生と英語でのコミュニケーションをはかりつつ、積極的にグループワークに取り組みました。
3日目
名古屋大学農学部の11研究室に分かれて研究室実習を体験しました。参加学生は、各研究室で農学分野の最先端研究に触れ、感銘を受けた様子でした。
4日目~6日目
参加学生の希望により5テーマに分かれ、2泊3日の「グループ調査・体験研修」を実施しました。フィールド学習を中心とした「グループ調査・体験研修」では、海外学生と同数の日本人学生が混在するグループで行動することにより、日本の農業の実情を各海外学生が確実に理解することができました。また、三カ国の学生が長時間にわたり行動を共にすることで、学生間の交流が深まりました。各テーマの訪問先と研修内容は以下の通りです。
7日目
成果発表会を行い、「グループ調査・体験研修」の成果をグループごとに発表しました。各グループとも熱のこもったプレゼンテーションを行い、聴衆の学生との活発な議論が展開されました。終了後には農学部長から学生1人1人に修了証書が手渡されました。その後、名古屋大学総長、同国際担当理事、同教育推進部長の臨席のもと、送別会を兼ねた交流会を盛大に開催しました。
8日目
グループごとに名古屋市内の見学へ出かけました。名古屋城、東山動植物園、名古屋港水族館などを訪れ、愛知県の文化に触れるとともに、買い物などを楽しみました。
このように、参加学生は日本の農業の実情や、農学分野における先端基礎研究についてグループワークを通じて学び、また、三カ国の同年代の学生間の交流を深めることができ、実りの多いプログラムとなりました。日本人学生にとっても、英語能力の向上や、さらなる語学力アップをめざす動機付けにもなり、海外を肌で感じる絶好の機会となりました。これまでの本プログラム参加学生の中から名古屋大学農学部に留学する学生が出るなど、交流の成果があがっています。今後も名古屋大学および本学農学部教育の国際化の一端を担うプログラムとして、継続的な実施に取り組んでいきたいと考えています。