2015年度 活動レポート 第12号:青山学院大学理工学部物理・数理学科 三井敏之 教授

特別寄稿 第12号

興味深い話題提供に活発な質疑を展開
青山学院大学・Chulalongkorn Universityのインターンシップ研究
三井 敏之

執筆者プロフィール

[氏名]:
三井 敏之
[所属・役職]:
青山学院大学理工学部物理・数理学科教授
 

プログラムの概要

科学技術振興機構主催のさくらサイエンスプログラムとして、青山学院大学の受け入れインターンプログラムを実施しました。送り出し機関はタイでトップのChulalongkorn 大学で、二か月間のプログラムとして単位認定を行います。

2015年度はMechanical Engineering 2名、Computer Engineering 2名、Information and Communication Engineering 7名の11名(さくらサイエンスプログラム対象者10名)を研修生(インターン)として受け入れました。理工学部の情報テクノロジー学科、経営システム工学科、物理数理学科、電気電子学科所属の11研究室がホストとなり、期間は先方の単位認定の規定8週間として2015年6月1日より研修を開始しました。

プログラム
1日目 到着、学内寮オリエンテーション
2~5日目 インターン実習
6日目 日本科学未来館(江東区)
TEPIA先端技術館(港区)
8~12日目 インターン実習
13日目 東芝未来科学館、三菱みなとみらい技術館(横浜市)
15~52日目 インターン実習、中間発表会
46日目 セミナー慶応大学中澤 仁 氏
47日目 セミナー東京電力技術開発センター中島 達人 氏
51、52日目 発表会
53日目 科学技術館(千代田区)、東京タワー見学(港区)
54日目 認定書授与式とフェアウエル
55日目以降 帰国
 

プログラムの成果

効果があった企画は、青山学院大学さくらサイエンスプログラムの特徴でもある8週間の研究研修です。四六時中研究に従事するタイのエリートの研究レベルはとても高く、今後の共同研究に発展します。研修生にとっては、本国では経験できない日本の技術や実験装置の修得は、研修生のキャリア選択に大きな影響をもたらします。研修生は本学など日本での進学や就職を希望し、現在もコンタクトをとっております。

また、さくらサイエンスプログラムでの受け入れと、Chulalongkorn 大学の単位認定として8週間という期間を活かして
6月6日、日本科学未来館(江東区)、TEPIA先端技術館(港区)
6月13日、東芝未来科学館、三菱みなとみらい技術館(横浜市)
7月23日、科学技術館(千代田区)、東京タワー見学(港区)
と、プランで推奨する関東圏の科学館7つのうち5つを見学しました。

科学技術館見学
東京タワー見学

7月16日には慶應義塾大学環境情報学部准教授中澤仁より人々の生活から情報収集・データ解析より公共サービス向上の取組み、17日には東京電力技術開発センター中島達人氏より日本の電力事情についてご講演をしていいただきました。いずれも研修生には興味深い話題であり、活発な質疑があり、タイと日本との差についても考えるよい機会となりました。

セミナー:慶應義塾大学中澤 仁先生
セミナー:東京電力技術開発センター中島達人先生
インターン風景

受け入れ機関の効果

本プランは、研修生の研究活動により研究室メンバーと交流し、また、共通施設使用や一般日本人学生との交流企画により、大学全体としての国際交流活動へも貢献もしました。

タイのエリートでは研修生の青山学院大学の日本学生への影響は大きく、クリティカル考え方、研究への意識の高さ、キャリア志向に影響を受けました。日本人学生も変化が観られて、双方に効果的なプログラムとなりました。青山学院大学からのChulalongkorn 大学への派遣留学の希望者も増加しました。

教職員や大学の国際化への影響も大きく、すべての教職員が英語対応の必要性を感じまして、教職員向け英語研修の希望者が倍増して、英語の講義数も増えました。ここでの研修生の院進学をリクルートするために、英語化と入学時期の改革をすすめています。

研究発表
Farewell partyにて 修了証授与の様子

将来の展望

研修生の「さくらサイエンスプログラム」への謝辞の言葉や今後の渡日を視野にいれたキャリアパスにより、プランの目的でもある「日本の最先端の技術を学び、日本との友好を育む」に大きく貢献できた青山学院大学のプログラムでした。今後もこの素晴らしい「さくらサイエンスプログラム」をChulalongkorn 大学の公式プログラムホスト校として実施していきたいと思っています。来年度はタイマヒドン大学を追加し、研修生と受け入れ研究室の増加を計画しています。

課題があるとすれば2015年度の研修生へのサポートがとても限定的だったことです。原因はChulalongkorn 大学の意向を第一に尊重した結果で、研修生のキャリアプラン(春学期終了直後の2か月インターン)に基づき、日本との友好(さくらサイエンスプログラム)を希望されました。しかし基準より長い期間のプログラムでは渡航費がすべてカットされ、短い期間内に出入国したほうが得な規定になっています。

“グローバルスタンダートなプラン”としてアジアの優秀な人材を招聘するなら、先方のキャリアプランを尊重した「さくらサイエンスプログラム」であるほうが、その価値やstatus も上がると思います。