特別寄稿 第10号
兵庫県立神戸高等学校が理科教育でシンガポール高校生と国際交流
英語コミュニケーションで活発な議論
芦田 亮太
執筆者プロフィール
- [氏名]:
- 芦田 亮太
- [所属・役職]:
- 兵庫県立神戸高等学校・総合理学部教諭
プログラム | |
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1日目 | 到着、姫路城見学 |
2日目 | 平等院鳳凰堂、金閣寺、清水寺見学 |
3日目 | インスタントラーメン発明記念館、おおさかATCグリーンエコプラザ、森野サンプル見学 |
4日目 | ホストファミリーと過ごす休日 |
5日目 | 英語ポスターセッション、英語ディスカッション、ウェルカムパーティー、自然科学研究会との理科実験 |
6日目 | 京都大学訪問、英語サイエンスコンペティション |
7日目 | 理化学研究所訪問、シスメックス(株)訪問 |
8日目 | 大阪大学訪問、関西国際空港にてお別れ |
理科的な交流を通して国際性の育成が目標
2015年8月20日から8月27日まで、さくらサイエンスプログラムの支援を受けてシンガポールのラッフルズインスティテューション(以下RI)との交流活動を行いました。RIはシンガポール有数の進学校で、意欲の高い優秀な学生が多く在籍しています。中等部の4年間、高等部の2年間から成る中高一貫校ですが、中等部では理科や数学に多くの授業時間数が割かれ、手厚く先進的な理数教育がされています。今回来日したのは中等部4年生の男子学生10名と引率教員の先生です。
一方受け入れ機関となった兵庫県立神戸高等学校は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されており、先進的な理数教育を進めるとともに、海外の研究者や学生との理科的な交流を通して国際性の育成にも力を入れています。RIと神戸高校は姉妹校提携を結んでおり、毎年お互いの学校を行き来して交流を行っていますが、今年度は例年以上に理科的な内容の充実を図るためさくらサイエンスプログラムの支援を受けて実施しました。
今回の交流事業で行った活動は大きく分けて3つです。1つ目は校内での理科実験や研究発表を通した理科的交流です。2つ目は校外の理系研究施設や企業の訪問です。そして3つ目が、ホームステイやウェルカムパーティー、文化施設訪問を通した文化的交流です。ホームステイの受け入れはもちろん、各活動に関しても全校生徒から参加者を募り、学校を挙げての行事となりました。
英語コミュニケーションが国際性を養う
まず1つ目の校内での理科的交流では、英語ポスターセッション、英語ディスカッション、サイエンスコンペティション、自然科学研究会との理科実験を行いました。神戸高校の総合理学科では第2学年において、自ら科学的なテーマを設定し実験や観察をしながら研究を進める「課題研究」を行います。来校したRIの生徒たちも同じような課題研究を普段の授業で行っており、今回「英語ポスターセッション」において両校の課題研究の成果を披露し合う時間が持てました。このポスターセッションには総合理学科以外の生徒や教員もオーディエンスとして参加しました。
「英語ディスカッション」においては、問題提起として、高輝度光科学研究センターから八木直人先生を招いて“International Collaboration in Science”という題目で30分程度の講演を行って頂くところから始まりました。その後参加者たちはグループに分かれ、国際的に科学を通じてどのような協力ができるかを英語で話し合いました。授業を含む学校生活が全て英語で行われるRIの生徒たちと比べると英語を使う機会が少ない神戸高校生ですが、授業で習った表現を駆使しながら活発な議論を行っていました。
2つ目の校外の理系研究施設や企業の訪問では、京都大学、大阪大学、理化学研究所、シスメックス(株)を訪れました。京都大学、大阪大学では研究室を見学させて頂いただけでなく、最先端の研究内容に関する講義もして頂きました。これらの研究施設・企業訪問は神戸高校生にとっても貴重な機会でしたが、RIの生徒たちは特に日本の最先端の研究内容の説明に熱心に聞き入り、質問をしていました。日本を発つ際のアンケートには、「また将来研究者として日本に戻って来たい」と書いていた生徒もおり、日本の科学技術についてしっかりと学んでもらえたと思います。
文化交流で親睦深まる
3つ目の文化的交流においては、ホスト生徒との受け入れ家庭での交流を始め、ウェルカムパーティーや、京都の金閣寺・清水寺や姫路城などの文化施設見学を行いました。ウェルカムパーティーでは両校の生徒が昼食を囲み、自己紹介をしたりお互いの国のことを話し合ったりしました。最初の方こそ緊張していましたが、応援団によるエールが披露され、また校長先生から記念品が贈呈されると、緊張も解けて楽しそうに歓談していました。これらの文化的交流はホスト生徒を始めとする神戸高校生とRI生徒との絆を強め、またRIの生徒が日本文化への理解を深めることによって、今回の交流事業の一番の目的である理科的交流の土台作りに役立ちました。
最終日には関西国際空港にてRIの生徒を見送りましたが、生徒たちは非常に名残惜しそうに再会の約束を交わしていました。今回の交流事業はどちらの高校の生徒にとっても理科に関する貴重な学びの経験となっただけでなく、姉妹校の生徒と知り合い仲を深める有意義な交流の場となりました。