2015年度 活動レポート 第6号:香川大学副学長、希少糖研究センター長、医学部 徳田雅明 教授

特別寄稿 第6号

糖尿病、肥満、高血圧の実態などについて研修
香川大学の「生活習慣病の克服プログラム」の報告
徳田 雅明

執筆者プロフィール

[氏名]:
徳田 雅明
[所属・役職]:
香川大学副学長、希少糖研究センター長、医学部教授
 
プログラム
1日目 関西空港到着、オリエンテーション
2日目 希少糖生産工場見学(伊丹市)
3日目 大学附属病院で糖尿病講義、病棟見学
さぬき市民病院で糖尿病クラス見学
4日目 希少糖シロップ生産工場見学(坂出市)
運動教室
5日目 神戸市立青少年科学館見学(神戸市)
6日目 農学部において機能性食品講義
希少糖による食品開発実習
7日目 高松市内観光
8日目 うどん大学入学体験・琴平見学
9日目 香川大学医学部でのフォーラム開催
10日目 帰国
 

実施目的とプログラムの概要

平成26年12月14日~23日の10日間にわたり、「生活習慣病の克服プログラム」と題して、チェンマイ大学医学部・看護学部・附属病院(タイ国)から6名、ブルネイ・ダルサラーム大学医学部(ブルネイ・ダルサラーム国)から5名の計11名を香川に招へいし、生活習慣病にどのように取り組めばよいかを議論し、共同で何ができるかを考える機会とした。若手教員8名、大学院生2名、学部学生1名の構成であった。両大学と香川大学との長年の国際交流基盤がある。ブルネイ・ダルサラーム大学とは2005年から交流を始め、昨年10周年記念式典を挙行した。この10年間には、学生交流、共同研究などをさまざまに実施してきた。チェンマイ大学医学部との交流は2006年に開始した、同看護学部とは2009年に交流を開始した。生活習慣病はやはり共通の課題であり、特に過疎地や近隣諸国からの依頼でチェンマイ大学が展開している医療支援に協力する形で、香川大学も医療・看護協力を行ってきた。最近その中でも、糖尿病や肥満、さらには高血圧などの生活習慣病が問題となってきている。

プログラムの中では、①日本における生活習慣病(特に糖尿病や肥満)の実態について、②糖尿病への取り組み、③健康食品(特に希少糖について)について勉強した。参加者は、糖尿病や肥満が増加している危機的状態を踏まえて2009年に香川大学医学部や県、県医師会などで結成した「チーム香川」の取り組みに大きな興味を持った。その中では、専門医のいる病院とクリニックの連携をK-MIX(かがわ遠隔医療ネットワーク)により実施して効果が上がっていることなどが紹介された。

糖尿病チームのスタッフとともに記念写真
希少糖研究センター生産ステーション見学

もうひとつ参加者が口を揃えて評価したことは、香川大学発の「希少糖」の取り組みである。自然界に極微量しか存在しないが種類は多い(50種類以上)希少糖は、今後砂糖に替わり用いられて、糖尿病や肥満を予防・改善する効果が期待できるものである。その研究や開発に参加者は大きな興味を持った。熱心に機能性について勉強し多くの質問も投げかけられた。また香川大学で希少糖を用いた機能性食品の開発まで進んでいることに驚いていた。タイ、ブルネイ両国において大きな問題となりつつある生活習慣病対策に、希少糖を導入することについて大変前向きな発言があった。

12月22日に開催したフォーラムでは、参加者が具体的に今回得たものの中で、①すぐできること、②時間はかかるが将来に向けてできること、を発表した。この議論には、医学部、看護学部のほか、農学部、教育学部、工学部、インターナショナルオフィスなど学際領域の教員や大学院生が参加した。特に学生や若手研究者が多く参加し、議論に加わったことは重要であった。

今回こうした宗教背景の異なる2つの国から研究者が集い、共通の問題である糖尿病や肥満について、相違点や共通点を議論し合えたことは予想以上に大きな効果があった。これまで行っていた二国間の線の交流が、三国間の面の交流に拡がり、糖尿病や肥満を専門にする3カ国の教員・研究者のネットワークができた。そして今回の成果として今後も将来に向けた取り組みを共同で行うことになった。①糖尿病と肥満の比較研究(医療・看護など)を実施すること、②教育プログラムを相互に紹介すること、③希少糖や生物資源を用いた機能性食品を開発すること、である。10日間同じ領域の人たちが、生活習慣病の学際的な取り組みに絞り、意見交換することによる連鎖反応が起こったとしか思えない。

希少糖生産企業を見学
フォーラム風景

終了後の展開として特筆したいことが2つある。第一には、2015年6月14日に3大学が合同で生活習慣病への取り組みに関する国際シンポジウム「HEALTHY LIFESTYLE SYMPOSIUM JUNE 2015」と銘打った国際シンポジウムをブルネイにおいて開催したことである。そしてまた、ブルネイ大学とチェンマイ大学とで、希少糖を用いた臨床試験と機能性食品開発を開始することが決まり、すでに両大学において計画を立て、倫理委員会の承認も得て実施に向かっている。今後ますます焦点を絞った取り組みの展開が期待でき、人事交流と共同研究が活発になると期待できる。

フォーラムでの発表風景