2015年度活動レポート(一般公募コース)第261号
中国・山東理工大学から訪日し食品加工・検査について学ぶ
国際善隣協会からの報告
山東省は近年、経済発展に伴い、食の多様化や安全に対する希求が強まっており、また、山東省は我が国に近く、多くの生鮮食品の供給を仰いでおり、その安全性には強い関心を抱かざるをえない。こうした状況下で、今回の研修団を受け入れたのは時機を得たものである。
山東理工大学における食品研究の現状として、挙げられるのは生鮮食品を含め、鮮度保持(特にマッシュルーム)及び食品の残留農薬検査に重点が置かれており、これらについて様々な対策を考案している。今回の訪日研修でもその辺に重点があったようである。
全員が訪日が初めてで、その構成は大学院生が中心であった。当初は少し緊張したようであったが、すぐに日常に戻ったようであった。1週間という短い研修期間であったため、できるだけ幅広く日本の当該分野を理解してもらうべく日程を組んだ。短くても密度の濃いことを念頭に置いた。むろん時間上の制約のため、行動範囲は東京を中心とした周辺に限られた。
基本的には食品問題は製造・検査ともに一般市民に大きく関わるものであり、そこには国の機関、地方自治体、大学及び民間企業等幅広い機関がかかわる。こうしたことに鑑み、日程作成に当たり、国の機関として、筑波の食糧総合研究所、地方自治体として、都立食品技術センター、都立健康安全センター、都立太田市場、大学としては千葉大学園芸学部及び民間企業ではサントリー工場、城南島廃棄物肥料化工場等幅広い機関を訪問し、それぞれの食品製造、食品検査等の日常の具体的活動を講義及び設備視察を中心に研修した。
今回の視察研修の特色として、都立食品技術センターは東京都傘下の中小企業のために新しい食品製造方法を開発し、伝達し、都立健康安全センターでは最新の食品検査方法(残留農薬も含む)によって受託検査を実施する。国立食糧研究所では放射線による食品の鮮度保持、保存に関する同研究所のおける研究の実情の説明を受けるとともに実験設備を見学した。これらの訪問は山東理工大学の現在の研究テーマにも沿うものであったため、熱心に見学していた。その他、TEPIAの見学では日本の先端技術の一端をみることができたことを喜んだ。
今回の訪日では山東理工大学の教授(李艶桀女史)がかって筑波大学に留学した折、食料総合研究所において、共同研究したことが解り、その際、共同研究した日本人研究員にも会うことができ、今回の訪日者たちに同研究所がより身近に感じられたようであった。そして、その中の大学院生の1人は是非マッシュルームの保鮮関連の研究のため、留学したいと述べていた。
山東省は我が国と距離的にも近く、過去から長期に亘り、生鮮食品を中心に我が国に食品を供給してきた重要な隣邦であり、今回の訪日を通じ、この分野での交流が図られ、相互理解が深まったことは大変意義あることであったと思う。