2015年度活動レポート(一般公募コース)第260号
寒冷地における科学技術の取り組みと将来の可能性を探る
札幌日本大学高等学校 三枝哲志さんからの報告
本校はさくらサイエンスプログラムの助成により、2016年1月27日~2月3日の期間、モンゴル国より新モンゴル高等学校および新モンゴル工業高等専門学校の生徒10名、教員1名を招へいし、「寒冷地における科学技術の取り組みと将来の可能性を探る」をテーマとして施設見学および講演参加などのプログラムを実施しました。
本校の所在地である北海道では寒冷地の特性を活かしたさまざまな科学技術研究が行われていますが、今回の招へい対象者の住むモンゴル国も世界有数の寒冷地であり、双方の高校生が科学技術を通じて交流を図り、北海道で実践されている寒冷地における自然科学分野の研究を学ぶ機会を設けました。
なお招へい者は本校SSHクラスに在籍する生徒宅にホームステイをし、生活文化面での交流も図りました。
施設見学ではまず北海道大学低温科学研究所を訪問しました。ここでは雪の結晶の観察、また、古川義純特任教授より特別講義『宇宙ステーション「きぼう」で氷を作る実験』のメカニズムについての概要や魅力についての講義を受けました。
講義終了後、古川先生が実際に宇宙での実験(氷の結晶成長)に用いた微小重力環境による氷結晶生成の小型実験装置の見学、その後、グループに分かれ、日本に2ヶ所しかない(他には国立極地研究所)-50℃の超低温保存室を見学しました。ここには、南極大陸の氷床から採取された約70万年前の氷が含まれる「氷コア」が保管されており、その氷を用いて様々な測定・実験が行われています。
1941年に北大初の附置研究所として設立された低温科学研究所で最先端の研究に触れることで、知的好奇心を喚起することができ、科学および研究に対する意欲が高まる有意義な研修となりました。
トヨタ自動車北海道苫小牧工場の見学ではオートマチックトランスミッションやCVTの最先端の製造現場の見学を行いました。音更町ではよつ葉乳業十勝主管工場を見学しました。バターや牛乳の製造ラインを見学するとともに、十勝の酪農の現状や将来の展望について学習しました。モンゴルでは乳製品の加工技術が発展途上ということもあり、自国の酪農業の可能性について良い研究テーマを得られた機会となりました。
陸別町では「りくべつ宇宙地球科学館」の施設見学を行いました。こちらでは、日本最大級の115センチ反射望遠鏡を用いて冬の星座の観察及び講義を受けました。氷点下20度を下回る極寒の中での観察となりました。
また同町内では日本で低緯度オーロラを観測した陸別町においてオーロラの権威である上出洋介先生(名古屋大学名誉教授)による講義を受けました。講義は陸別町議会の議場で行われ、『オーロラとは何か』をテーマとした講義を受けました。オーロラのメカニズムから自然への影響、また将来の可能性についてのディスカッションを交えたプログラムを実施しました。
日中のりくべつ宇宙地球科学館ではオーロラ観測体験を行いました。これは、カナダ・イエローナイフにおけるオーロラの発生の様子を天文台のドーム型スクリーンに映し出される仕組みをつかって観察するものでしたが、オーロラが発生した瞬間には生徒全員が感動の声を上げていました。
今回のプログラムを通じて理数教育分野でのグローバルな交流を図り、将来の寒冷地における科学技術研究の可能性を探るとともに、自分たちの居住地域の振興を担う科学技術者の育成を志すきっかけとなったと考えます。