2015年度活動レポート(一般公募コース)第202号
科学技術のイノベーション推進のためのSTEM*教育プロジェクト
静岡大学教育学部からの報告
(STEM: Science, Technology, Engineering and Math)
静岡大学教育学部
静岡大学とインドネシア教育大学(UPI)の両国の発展に貢献するであろう将来の研究者が協働して、知識基盤社会のなかでそれぞれの国に科学技術イノベーションを起こすために、一つの教育研究デザインを作り上げることが今回のプログラムの目的でした。そこで、以下のような日程のもと、1月18日~27日の日程で、インドネシアからの学生・院生及び指導教員を受け入れました。
1日目
2日目
参加者に本プログラムの趣旨を説明して、近年本学のプログラムにおいて協力機関としてご尽力いただいている「静岡科学館るくる」を訪問し、体験型の科学館展示の視察をしました。この際、科学館の長澤友香館長には展示について、実際にご説明頂きながら体験することができました。また、夕方には、静岡大学教育学部長を表敬訪問しました。
3日目
2013年度以降、本学で実施してきた「静岡STEMジュニアプロジェクト」の全容を説明しました。これについては、過去の学会等での発表内容のみならず、今回参加者の一人であり、本学でPh.D.取得後に、現在インドネシア国立教育大学の物理教育講座で講師を務めているIrma Rahma Suwarma博士と計画し実践した2014年度の活動と、それを構築していくうえで、関係する学生・院生・研究者の研究デザインの最適化を図りながらやっていくことの重要性と難しさについて、議論を交えながら共通理解を得ることを目指しました。
4日目
日本での数少ないSTEM教育実践校である山梨学院大学附属小学校から、小林祐一教諭に来ていただき、参加者へ同校での実践状況、その難しさなどについて講演頂いた。また、その午後には静岡大学附属静岡中学校を訪れ、昨年度からSTEM教育実践の経験のある山田・海野遼生教諭による、中学校2・3年生の授業を参観しました。どちらも、日本の学校としてはより生徒中心の活動を取り入れるとともに、工学や技術といった面を教材に反映させている実例であり、彼らが実際にデータを取るとした場合のイメージがわいたようです。なお、それらの活動を記録するため、また本人たちの振り返りの場として、インターネット上に記入のできる場(CMS:Moodleを利用)を設けました。
5日目
本学教育学部理科教育学講座の郡司准教授に特別講義をしていただきました。内容は郡司先生が現在行っている、歴史的なアプローチによる日本の技術・工学的教育の再考で、過去の日本の教育の中でもかなり技術についての教育はなされていたことを示す教科書や学習材も紹介していただきました。また、実際にSTEM教室等で実施している教材も紹介して下さり、参加者が実際に作ってみる場面も用意されました。午後には、研究方法とデータ分析について、後の教育実践の見学予定を示しながら検討することにしました。
6日目
この日、静岡科学館るくるを再度訪問し、静岡STEMジュニアプロジェクトとして行われている科学教室に参加しました。今回は特に、本学の学部生が教材を準備し、実践する場に立ち会うことができました。
午前中は、Legoやkidswind社の教材を用いて風力発電装置の開発を行うSTEM教育を、午後はその継続と自由研究の指導の場面を見ていただくことができました。今後の協働研究を進めるうえで、日本国内ではどのような教育実践が成されているのか、またインドネシアの典型的な教育との違いはどんなものか、それを踏まえたうえで、両国にとって利益となりうる研究モデルはどんなものかについて考えていただくことが重要と考え、いくつかの形態の授業を見ていただくこととしました。
7日目
午前中には、参加者の疲れが見えてきたこともあり休息を取っていただいた。午後からは、藤枝市生涯学習課からの依頼で静岡大学が行っている科学教室に参加し、STEM教育実践を見学しました。こちらの科学教室では、比較的低学年である小学校5年生を中心とした子どもたちが参加しており、理科教育学講座の講義に参加している学生が授業を構築するという形をとっています。ここでは、太陽光発電キットを使ったソーラーカーの教材を扱うものでした。こうした科学・工学的活動について、比較的初心者である児童がSTEM教材に出会うことで、また静岡科学館とは違った反応が見られ、インドネシアでの活動を再度考える機会となったようです。
8日目
午前中に、静岡大学学長を表敬訪問するとともに、静岡市立城内中学校の授業参観を行いました。学長とは、静岡大学とインドネシア国立教育大学との間の関係で現在進行中のプログラムが複数あること、また博士課程のプログラムとして教育関係では2つの選択肢(創造科学技術大学院と愛知教育大学との共同大学院)があること、これからの共同研究の計画が進行していることなどを話しました。
城内中学校では、日本のいわゆる公立学校での理科と数学の授業を見学しました。これまでに見学した静岡科学館や藤枝市とのSTEM教室と比べると、教師の側から生徒に伝える形式が多く、その点もインドネシアの視点からみると、新鮮に映ったようです。午後は、これまでの静岡STEMジュニアプロジェクトにおける実践状況と関連する理論に関する文献の紹介や、それにまつわる議論を行いました。
9日目
先に静岡科学館を見学していたとはいえ、国立科学博物館の規模と展示の充実している点に皆、驚いていました。インドネシアにおいては学校における教育と比して、学校外での教育、あるいは科学館・博物館の教育的な役割については、まだ十分に理解・共有されていない部分があるかもしれず、そうした点でも、今後共同研究を進めていく上で、システミックな改革が成され、継続していくことを議論し深めていく必要があると感じられました。
10日目
日本科学未来館では、静岡科学館とも共同で進めている「つながりプロジェクト」に利用されているGeo Paletteや、Geo Cosmosなどの展示、あるいは丁度小学生を招いた科学教室が行われていたこともあり、科学教育の場面としての科学館を見聞することができました。