2015年度活動レポート(一般公募コース)第185号
学びと体験で築いた日本とアジアの高校生たちの交流の輪 その1
公益財団法人 東芝国際交流財団(TIFO)からの報告
東芝国際交流財団
公益財団法人 東芝国際交流財団(TIFO)では、日本とASEANの高校生が日本に一堂に会し、日本に対するASEAN諸国の学生の関心を高めるとともに、将来のアジアの展望についてともに考える機会を提供することを目的として「Toshiba Youth Club Asia (TYCA)」を2014年度より開始しました。
第2回目となる今回は、さくらサイエンスプログラムの支援のもと、12月19日から26日の8日間にわたり、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ブルネイの5か国から高校生10名(各国2名)と、アドバイザー5名、日本からは高校生7名(慶應湘南藤沢高等部3名、早稲田高等学院1名、隠岐島前高校3名)および教員4名がTYCAに参加しました。
期間中、参加者たちは各国混成の4つのグループ(T、Y、C、A)に分かれ、「TYCA Asian Vision 2035」をテーマに、国立オリンピック記念青少年総合センター(オリンピックセンター)を拠点として、専門家による講義、ワークショップ、フィールドトリップ、グループディスカッションなど数々のプログラムを体験しました。最終日には、期間中に得た知識などをもとに、テーマに基づく成果プレゼンテーションをグループごとに行いました。
Day1 (12月19日):オープニングセレモニー
午前中、ASEANからの参加者が無事日本に到着。前日の深夜出発のため、多少の疲れを見せながらも、一部の参加者にとっては初めてとなる日本への期待に皆笑顔を見せていました。
午後からは、オープニングセレモニーを開催。TIFO代表からは、歓迎の挨拶とともにTYCAの主旨やプログラム概要について説明が行われました。また、期間中に学んで欲しいこととして以下の5つを挙げました。
Day2(12月20日):多様性の理解
2日目の午前中は、互いの国について理解を深めるために、自分の国について、また自分の住んでいる街やライフスタイルについて、各国ごとに発表を行いました。同じアジア地域に住んでいながら、全く異なる生活環境、文化、習慣などに、参加者たちは皆深い関心と驚きをおぼえたようで、活発な意見交換が飛び交いました。
午後は、各国混成の4つのグループ(T、Y、C、A)に分かれ、TYCAに参加するための選考課題であったエッセイ「The role of my country and of Asia in the future」を各自が発表し、自分たちのこれまでの経験や知識、抱えている問題意識を共有しました。
その後は、「日本の将来的な社会デザイン」と「社会と共発展できる企業」という二つのテーマを中心に、講演・研修・執筆活動を行っているピーター・D・ピーダーセン氏(リーダーシップアカデミーTACL代表)による講義が行われました。
ピーダーセン氏は日本に来日して20年の間に複数のビジネスを立ち上げた経験があり、その経験を基に得た、企業家の視点からみた社会的課題への取り組みに対する教訓について述べられました。長年の経験に基づく氏の講和は、これから将来を考えていく高校生たちにとって非常に興味深いもののようでした。
2日目の締めくくりのプログラムでは、午前のプログラムで互いに共有した経験、知識、問題意識を基に、最終日の成果発表会の題材となる”Vision:20年後に創りたい世界とアジア”を作成しました。この”Vision”を念頭に置きながら、参加者たちは翌日以降のプログラムを体験していくことになります。
Day3(12月21日):環境と発展について学ぶ
3日目の午前中は、平田仁子氏(特定非営利活動法人気候ネットワーク理事)より、「Global Problems We Face」をテーマに、1992年リオデジャネイロ会議でのセバン・スズキおよび2014年の国連環境サミットでのレオナルド・ディカプリオの講演などの映像を見ました。
そしてCOP21に実際に参加して得た最新情報などを盛り込みながら、気候変動、大気汚染、自然災害、エネルギー問題、貧困問題、テロリズムといった国際的な課題についての講義が行われました。参加者たちは、身近に直面している課題に対する認識を新たにしていました。
その後は昼食をはさんで、明治神宮を訪問。都会の真っただ中に存在する広大な鎮守の杜で、日本の文化体験と自然を楽しみました。
自然の中でリフレッシュした後は、環境問題と経済の関係について学ぶワークショップを実施しました。このワークショップでは、福沢諭吉文明塾の塾生により開発されたゲーム型教育ツール『Logy&Nomy』を使用しました。
『Logy&Nomy』はプレイする中で、「経済活動」と「環境対策」を両立させ、その相互作用と持続可能性を意識しながら自分の国を更なる発展へとどのように導いていけばよいかを自然と学習させることを目的として開発されたものです。参加者たちはゲーム感覚で楽しみながらも知識を身に着けていたようでした。
3日目最後のプログラムは、石橋直樹先生(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部講師)により、「社会を変える科学の役割」として、過去から現在にいたる科学技術の変遷とそれによる社会への影響について講義が行われました。
1日の終わりには、その日学んだ事を振り返り、前日に作成した”Vision”に関連することについて、また、それ以外に興味深かったことについて「E-journal」としてグループごとに記事にまとめました。この「E-journal」作成の作業は、この日以降毎日1日の締めくくりに行われました。
Day4(12月22日):科学技術とソーシャル・イノベーションについて学ぶ
4日目の午前中は東芝未来科学館を訪問しました。ここでは、最新の科学技術の他、東芝の創業者である田中久繁が製作したからくり人形の実演や、東芝が開発した日本初あるいは世界初の製品(1号機)を見学しました。冷蔵庫や洗濯機、カラーテレビ、扇風機など、今では当たり前のこれらの電化製品も、東芝が日本ではじめて製品化しました。参加者たちは、日本の電気・電子技術の発展の歴史の変遷と、科学技術の社会に対するイノベーションについて学びました。
先進の科学技術について学んだ後は、実際に日本の先進交通システムである「新幹線」に乗車体験しました。新横浜駅から東京駅までの短い時間でしたが、参加者たちは、その速さと快適性に驚いていたようでした。東京駅で下車後は、東京駅全体を眺められるKITTEビルの屋上に移動し、たくさんの電車が短時間に決められた時間通りに走行する様子を眺めながら、東京駅について、日本の交通システムについての説明を聞きました。
東京駅からオリンピックセンターに戻った後は、駒沢大学の石橋先生によるワークショップと講義が行われました。ワークショップでは、まずは各自がその日見た科学技術についてリスト化していき、その後、グループ内で自分たちの国に必要な技術は何か、またなぜ必要なのかについて議論し、グループごとに発表しました。
続く講義では、インターネットはどのように私たちの生活を変化させてきたかについて、「0」と「1」の基本的なデジタルの話から始まり、コンピューター技術とWWW技術の革新、現在誰もが使っているデジタルツールやSNSなどの発生による社会、特にコミュニケーション手段の変化などについて述べられました。