2015年度活動レポート(一般公募コース)第183号
ハノイ工科大学との大気汚染評価のための国際共同研究の推進
埼玉大学からの報告
埼玉大学
さくらサイエンスプログラムによりハノイ工科大学(Hanoi University of Science and Technology)の博士後期課程に在籍する学生1名が、2015年12月7日から12月27日までの3週間、埼玉大学大学院理工学研究科環境制御システムコース物質循環研究室(実施主担当者:関口和彦准教授)に滞在しました。
本プログラムでは大気粒子汚染の研究に従事するハノイ工科大学の博士後期課程学生を受け入れ、ハノイ市での実捕集サンプルを用いて化学成分分析や発生源寄与解析の手法を体験、習得してもらうことで、ハノイ市の粒子汚染現状について把握するとともに、現地での分析作業を指導できる人物を育成するだけでなく、大気環境分野での国際共同研究を実施する上で適切な観測時期や場所、さらには必要な測定装置などについても情報交換を行いました。本プログラムで滞在した学生は専任講師としてハノイ工科大学に今後在籍することが決まっており、今後の共同研究の推進において重要な研究協力者となり得る人材であり、今後の東南アジア地域での活躍が期待されます。
到着の翌日には、日本人学生チュータ―の案内で日本での生活に必要な生活品の購入や学内の施設見学を行い、さらに滞在中の研修内容について打ち合わせを行いました。3日目以降は、各種分析法や測定データの解析手法について研修をする一方で、5日目と12日目に交流事業として学外の研究施設見学を行いました。
5日目には、当研究室の学生と一緒に国立環境研究所の健康リスク研究室(本プログラム協力者、藤谷雄二主任研究員)を訪問し、自動車排ガスから出るナノ粒子の測定方法やその健康影響評価に関する実験施設を見学して回りました。最先端の研究設備の数々に、感動を隠せない様子でした。帰りには宇宙航空研究開発機構(JAXA)の展示館「スペースドーム」にも立ち寄りました。
12日目には、日本の都道府県に設置されている地方環境研究所の業務と取り組みを知ってもらうために、群馬県衛生環境研究所(本プログラム協力者、熊谷貴美代独立研究員)を訪問しました。環境を守るために必要な業務として、様々な環境試料の分析や評価を行っている様子を目の当たりにして、ベトナムにおける環境行政のあり方について改めて考えさせられる一面もあったようです。
本プログラムでは、大気試料の基礎的な成分分析だけでなく特殊な微量分析も体験してもらったため、各種分析手法の習得では細かい手技に最初は難航していたようですが、最終的には自身で分析できるレベルまで達し、帰国後には学んだ分析手法を役立てたいと意気込みを語っておりました。プログラムの最後には研究室の学生と合同で研究成果発表会を実施し、その後、修了証書と記念バッジを授与しました。
研究室におけるコミュニケーションはすべて英語であったことから、研究室の日本人学生にとっても国際性を高める上で貴重な経験となりました。最初は不安もあったようですが、週末には学生自ら都内観光やグルメツアー、ショッピングなどに連れ出してくれたようで、日本の様々な文化や食べ物にも触れることができたようです。3週間というのはかなり短い期間ではあったようですが、事後評価でも大変満足したとの評価を頂いており、今後の共同研究の進展に期待が持てるものとなりました。