2015年度 活動レポート 第175号:宮崎大学

2015年度活動レポート(一般公募コース)第175号

ミャンマー工学系若手研究者が日本の先端的な太陽熱エネルギー利用技術研究を体験
宮崎大学工学部からの報告

宮崎大学

JSTさくらサイエンスプログラムの支援を受け、宮崎大学は2015年11月30日から12月15日の16日間、共同研究推進コース(ミャンマー 太陽熱高度利用)を実施しました。

ミャンマー科学技術省から推薦された10名の工学系大学、研究機関の教員、若手研究者、修士学生と引率するマンダレー工科大学准教授1名の計11名が来日し、宮崎大学で日本の太陽熱エネルギーの高度利用技術研究の体験と新潟大学における大型模擬集光太陽ビーム照射装置を用いた太陽熱関連の研究開発状況の調査、宮崎県の食品廃棄物リサイクル・発電プラント、東京の太陽集光システムを含む光学機器メーカー視察などを実施しました。

宮崎大学のビームダウン式太陽集光装置は世界最高水準の集光性能を有しており、1500ºC以上の高温を達成することが可能です。最初に本装置の見学を行って太陽集光システムの基本原理を理解するとともに、高温の太陽熱エネルギーを高度利用するための技術開発研究を機械系(熱分野)、電気系(発電分野)、物理系(材料分野)、化学系(太陽熱分野)の4分野の研究室(教員6名で担当)に分かれて体験しました。

宮崎大学100kWビームダウン式太陽集光装置の見学

熱分野では高温蓄熱のためのレシーバーと蓄熱材、発電分野ではエンジンを原動機とする太陽熱発電、材料分野では火山灰の熱還元によるシリコン(Si)製造と集光型太陽光発電システム、化学分野では水の高温熱分解反応による水素生成に関して学修しました。

化学系(太陽熱分野)研究室における水の高温熱分解反応による水素生成反応実験

2014年度のさくらサイエンスプログラムへの採択を機に、工学部とミャンマーの工学系大学との交流活動の一環として、「さくらパダウ科学技術シンポジウム」が企画されました(ちなみに、シンポジウムの名前は両国を代表する花、「さくら」と「パダウ(Padauk)」から名付けられています)。

第6回さくらパダウ科学技術シンポジウム会場前にて

本プログラム中に第6回のシンポジウムを開催し、4研究室での研究活動体験の報告とミャンマーにおける自身の研究、今後の研究への成果反映について報告しました。また、このコース実施期間中にオーストラリアIT Power社のDr. Keith Lovegrove(元オーストラリア国立大学Solar Thermalグループリーダー)および同志社大学客員教授の合田忠弘博士を宮崎大学に招いて太陽熱国際シンポジウムを開催し、プログラム参加者も聴講しました。

Lovegrove博士からは世界の太陽熱利用技術の最新動向とオーストラリアの太陽エネルギー導入政策について、合田教授からは再生可能エネルギーによる電力供給と密接な関連のあるスマートグリッド技術について講演頂きました。

宮崎県は日本の農業基地であるとともに焼酎の出荷量が2014酒造年度日本一となり、数多くの焼酎製造事業者が県内で操業していますが、今回は都城市にある霧島酒造(株)を訪問しました。ここでは、焼酎粕からバイオガスを製造して工場の燃料としたり、発電設備の熱源として利用しているリサイクルプラントを見学しました。東京へ移動した後、ビームダウン式太陽集光装置を開発した三鷹光器(株)の中村社長による業務紹介を聴講し、工場並びに研究施設を見学しました。優れた光学技術を活かして開発された医療機器等の先端技術に触れることができ、研修メンバーは日没後も熱心に試験設備を観察していました。

霧島酒造(株)焼酎粕リサイクルプラントを視察
三鷹光器(株)中村社長による太陽熱事業紹介における討議

上越新幹線で向かった新潟では期待していた雪に出会うことは叶いませんでしたが、訪問した新潟大学では工学部の児玉教授と松原教授から、それぞれ集光太陽熱による化学反応を利用した燃料製造に関する研究、集光太陽熱を貯蔵するためのレシーバーに関する研究の講演を聴く機会を得ました。さらに、大型模擬集光太陽ビーム照射装置を設置した実験棟において、燃料製造に関する実験設備と集光太陽熱レシーバー開発のための実験装置の説明を受けました。

新潟大学工学部の児玉教授による集光太陽熱による化学反応を利用した燃料製造に関する研究紹介
新潟大学工学部の松原教授による集光太陽熱レシーバー開発に用いる大型模擬集光太陽ビーム照射装置等の実験装置の説明
上越新幹線に乗車して新潟に向かう

日本文化を体験するために、新潟では北方文化博物館・新潟分館と旧齋藤家別邸を訪れ、古き日本の伝統を肌で感じました。東京に戻ってからは鎌倉を訪れ、国宝の鎌倉大仏を参拝しました。研修メンバー全員が信心深い仏教徒であるために、雨天にもかかわらず大仏を長時間拝みました。その後、横浜中華街へ移動して、日本の中で外国の雰囲気を味わいました。

横浜中華街にて

本プログラムの最終盤に、日本科学未来館を訪ねて科学技術の歴史と最先端の両方を学び直しました。乗車したゆりかもめは自動制御で運行しているため、研修メンバーには大変興味深いものとして映っているようでした。このあと成田へ移動し、翌日の朝、数多くの体験とともにミャンマーへの帰国の途につきました。

成田空港からミャンマーに帰国

最後に、本プログラム実施に当たり、多方面からの支援を頂いたJST関係者の皆様、視察にご協力戴いた霧島酒造(株)の皆様、三鷹光器(株)の皆様、講演会等を企画・運営・協力して頂いた新潟大学の児玉教授、松原教授、オーストラリアのDr. Keith Lovegrove、宮崎大学工学部の関係者、また国際交流にご協力戴いた宮崎市を始めとする滞在地の皆様に心より感謝申し上げます。