2015年度活動レポート(一般公募コース)第174号
日本の産業・文化・経済など、幅広く学んだ中国の大学生たち
大同大学からの報告
大同大学
平成27年11月15日~28日、大同大学では中国の韓山師範学院から大学生9人と教員3人を受け入れました。そのうち10人がさくらサイエンスプログラムの支援を受けての参加となりました。実験・実習や学外での工場・施設見学をベースに、留学生向けのさまざまな体験を提供した盛りだくさんの2週間となりました。
到着日の翌日、16日午前中はオリエンテーションと大学の施設見学し、午後は名古屋市内を見学したあと、ウェルカムパーティーを行いました。大同大学の学生も参加し学生同士の交流の場となりました。留学生たちは初めてのことばかりにもかかわらず戸惑うことなく、ワクワクした表情で参加していました。
17日午前中は講義『日本文化のかたち』に参加しました。古来からの日本の文化とかたちの繋がりについて、意味や由来を交えながらの講義となりました。午後は講義『数理造形』と実習『生活雑貨のデザイン』に参加しました。数理造形の講義で学んだ内容を利用した造形の方法から生活雑貨をデザインし、それをレーザー加工機でカットする工程です。日々の生活に役立つオリジナル作品を制作しました。実習の後には、年齢性別国籍を問わずアンダーグラウンドなものからメジャーなものまで、さまざまな文化が“ごった煮”の雰囲気が魅力の町「大須」を案内しました。
18日午前中は大江破砕工場で不燃ごみ・粗大ごみを破砕し、資源・可燃物・不燃物に選別する過程を見学しました。中国では環境について大きな問題を抱えているため、ごみ処理に興味を示す学生が多くいました。
午後は学長による『大同大学の歴史と概要』と『日本の宇宙開発について』という内容の講演に参加しました。講演では質疑が活発に行われ、熱心に学ぶ姿勢がとても印象的でした。午後は講義『日本の文化と歴史(名古屋を中心に)』を行い、日本の文化・生活を念頭に置きつつ、日常で使える簡単な日本語会話を練習してもらいました。
また、滞在中に予定されている視察場所を中心に取り上げつつ、名古屋の歴史(戦国時代から戦後までのダイジェスト)・文化(文化施設・習俗・食文化)・産業(自動車産業・陶磁器産業)などを解説しました。
19日午前中は、実験『水道水のできるまで』を行いました。日本における浄水処理の方法を簡単に説明するとともにその処理法の一部を実習形式で体験してもらいました。その後、実技『卓球(基礎練習と試合の実践)』と、講義『ドローンの可能性と現在の問題点』に参加しました。本学の「ロボット工房」におけるドローンの取り組み、およびロボットコンテストへの取り組みを見学してもらいました。
20日AMは大同特殊鋼工場見学。鋼の原材料となるスクラップを電気炉に入れて「溶かす」工程から連続鋳造などで「固める」工程、そして「固めた」鋼片を伸ばす工程までを見学してもらいました。高温で真っ赤に輝く金属の大きな塊が目を前の行き来する様子を見るのはとてもエキサイティングだったと思います。
午後は汚泥処理場を見学しました。名古屋市の下水から水分を除去した汚泥を処理して再利用する施設を見学してもらいました。下水汚泥なので強烈な臭いがしますが、それも1つの体験です。汚物を処理する施設でありながら、たくさんの野鳥が訪れる干潟に隣接しており、施設が環境にも非常に配慮していることもたいへん興味深かったようです。
その後、古書をはじめ、CD・DVD・ゲームソフト・衣料品等、あらゆるリサイクル商品が販売されている「BOOK OFF SUPER BAZZAR」の視察を行いました。ブックオフは1990年代以降増加した「新古書店」と呼ばれるビジネスの草分け的存在です。リサイクル商品という「ブランド」や商品の安価さ等の強みを生かして短期間に急激な発展を遂げた、近年の日本を代表するビジネスの一つと言えるでしょう。店内には、現在は製造されていない製品も並び、「日本消費文化博物館」的様相を呈しており、これもまた興味深かったようです。
23日AMは講義『モノの値段の決まり方』。「モノの値段」はどのように決まるのであろうか、実際にコンビニとスーパーで買い物をしてもらい「モノの値段」の違いはなぜ起こるのか議論してもらいました。また日本の代表的な食べ物である「たこ焼き」作りを通じて、いかに安く買い物をし、効率よく速くさらには美味しく作ることができるか体験することで、経営の本質を理解してもらうとともに、本学の学生との交流も図りました。
午後はトヨタ自動車工場で、トヨタ生産方式による溶接・組立の過程など高品質なクルマづくりを見学しました。また、トヨタ会館ではトヨタのクルマづくりの考え方や、自動車関連技術を紹介する展示を見学してもらいました。
24日は御在所岳登山。あいにくの天候ではありましたが、2時間以上かけて登った山頂では笑顔で写真撮影していました。下山はロープウェイを利用し、自分たちが登ってきた登山道を見下ろし、きっと驚いていたことでしょう。
25日AMは名古屋市科学館。最新の科学技術全般にわたる展示や「生命」「生活」および「地球」をテーマにした生命科学の展示を見学。PMは実習『“におう”とは、どのような現象か?』。味覚と嗅覚の関係についてチョコレートを使って実験してもらいました。
26日は実習『パッケージのデザインおよび試作』。17日の実習で制作した生活雑貨のパッケージをデザインし、制作しました。グラフィックソフトで台紙のデザインを行うとともに、真空成形機によってブリスターパックを制作しました。
午後には修了式・フェアウェルパーティーを行いました。2週間で見たこと・学んだことの「印象に残ったベスト3」を各自発表してもらいました。日本文化について、実習・講義について、ゴミ処理の環境について、教職員について、トイレ・物価・マンホールのデザイン等々…、プレゼンをしてくれたときの一人ひとりの表情(笑顔)とそれを聞くオーディエンスたちの和やかな雰囲気から、この2週間の充実感をうかがうことができました。