2015年度 活動レポート 第165号:岡山大学

2015年度活動レポート(一般公募コース)第165号

「廃棄物マネジメントスクール」で学んだASEANの学生たち
岡山大学廃棄物マネジメント研究センター藤原健史さんからの報告

岡山大学

岡山大学廃棄物マネジメント研究センターは、2015年11月11日~11月19日に「さくらサイエンスプログラム 廃棄物マネジメントスクール」を開催しました。

ASEAN諸国のマレーシア工科大学(マレーシア)、バンドン工科大学(インドネシア)、ダナン工科大学(ベトナム)、そして王立プノンペン大学(カンボジア)の4校から、それぞれ2名の学生と1名の教員(マレーシアは別予算)の合計11名を招聘しました。学生は皆、環境問題や廃棄物の勉強をしている学生さんでした。

せっかく岡山大学に来てもらうので、しっかりと大学で講義を聞き、廃棄物処理施設およびリサイクル施設を訪問して、日本の高い廃棄物関連技術を見てもらおうと、すこしタイトなスケジュールを作りました。

しかし、学生も教員の方も最後までへこたれずに、毎日元気に予定をこなしてくれました。というのも、学生にとってごみが無いきれいな町、自主的に分別する習慣、悪臭の無い埋立処分場、巨大なごみ焼却炉、そして真庭市の町に溶け込んでいるバイオマス廃棄物リサイクルの活動などは、ASEAN諸国には無い珍しい光景ばかりだからで、写真をとったりメモをとったり情報収集に余念がありませんでした。

いま、ASEAN諸国では経済発展によって都市人口が増え、都市の大量の廃棄物の発生が深刻な問題になっています。日本人には当たり前のごみの分別排出や焼却ですが、これは日本だけであり、ASEAN諸国ではごみを集めたらそれを埋立場に積み上げておくだけなのです。

そのため、日本の技術に驚くのは無理ありません。ASEAN諸国もごみ処理の近代化を進めていますが、その役割を担うのは今の大学生達です。さくらサイエンスプログラムで日本に来た学生たちは、自国の廃棄物マネジメントの将来の姿の1つの可能性を見ることができたと思います。そのイメージとともに、今後学ぶ技術や知識をベースとして、自国にあった廃棄物マネジメントを構築して頂きたいと思います。

最初の2日間で、廃棄物マネジメントの集中講義を行い、学生は岡山の沿革、日本の廃棄物の歴史、処理技術、リサイクル技術などの知識を深めました。

講義風景

3日目には、早朝から住宅のごみ収集現場を訪問し、ごみが収集される様子やリサイクル収集場所を見学しました。午後には、リサイクルテクノロジーフォーラム(岡山県産業振興財団 B-Net Forum)を見学しました。講演を聴講し、各会社のリサイクル技術のブースも見てまわりました。

岡山市役所の資源ごみステーション
B-Netフォーラムのリサイクリング技術展で

日本のごみ処理は、日本人の美意識と結びついています。日本でごみの分別が成功したのも、ごみを「リサイクルすることは良いことだ」という美意識があるためだと思います。ASEANの学生さんに日本の美意識を教えるとても良い場所が岡山にはあります。それは後楽園です。そこで、全員で後楽園を見学しに行きました。きれいに整備された植栽、落ち葉ひとつない通路、岡山城を映し出す静かな水面など、感銘を受けたことと思います。

日本3大庭園の1つの後楽園を見学

6日目には、バスで真庭市エコタウンを訪問しました。真庭市は岡山県北にある森林に囲まれた町です。若者の人口流出や木材価格の低迷で森林管理が疎かになる過疎地で、森林バイオマスを資源利用やエネルギー利用を活性化することによって、町を復活させようという取り組みです。今では木材廃棄物の利用用途の開発や生ごみのメタン発酵なども行われており、リサイクルの成功例として日本に広く知られるようになりました。ASEANでは、多量に発生するバイオマス系廃棄物のエネルギー利用の関心が高く、そこで真庭市エコタウンの見学を設定しました。そして、森林保護バイオマスやメタン発酵、など真庭市での取り組みについて1日しっかりと見学しました。

真庭エコタウンの田舎レストランでの昼食

7日目には学外の視察として、岡山市の最終処分施設、都市ごみ焼却施設、リサイクルセンターを見学しました。ASEAN諸国では、生ごみをそのまま埋め立てているために悪臭が強く、ハエや虫などが多いのに対して、日本の処分場では焼却灰を埋めたてているために、臭いがほとんどなく清潔そうなので学生達は驚いていました。また、民間企業の古紙リサイクル工場(明和製紙原料㈱)、金属リサイクル工場(平林金属㈱)にも見学し、紙から和紙を作るデモンストレーションや、金属製品を細かく裁断した金属破片を自動分離する技術などを見せてもらいました。

古紙リサイクル工場の見学(明和製紙原料(株))
製材廃棄物の焼却炉と発電施設を見学
岡山市山上新最終処分場の見学
金属リサイクル工場の見学(平林金属(株))

最終日には、大学においてそれぞれの国の廃棄物処理の現状と問題について発表してもらいました。また、数日間のスクールで学んだ事について学生達が発表しました。自国と日本で廃棄物処理の何か違うかについて、学生は自分の考えを披露してくれました。そして、最後に教員の先生方も一緒になって、廃棄物マネジメントの発展の必要性と協力関係についてディスカッションを行い、スクールのまとめとしました。

最終報告会にて

岡山大学廃棄物マネジメント研究センターは、今回招聘した大学とはこれまでにも研究の連携を図ってきました。今後は教育に関しても強い連携を図りながら、アジアの将来の廃棄物技術者を育てていこうということになりました。今回の「さくらサイエンスプログラム 廃棄物マネジメントスクール」は、学生にとってのメリットのみならず、大学間での連携のためにも有意義な事業となりました。最後に感謝申し上げます。