2015年度 活動レポート 第150号:高知大学

2015年度活動レポート(一般公募コース)第150号

アジアの学生が高知の環境や農林水産業技術を学ぶ為に来日
高知大学農学部からの報告

高知大学

高知大学農学部では、アジアの農林水産業の将来を担う優秀な学生を毎年高知に招聘し、我が国の最先端の科学技術や持続可能な農林水産業の取組み、自然資源の利用・管理技術を紹介・体験する実習を行っています。昨年度に引き続き、今年度もさくらサイエンスプログラムの一環で、タイ、ベトナム、マレーシアから11名を招聘し、プログラムを実施しました。

歓迎会での様子

プログラムの前半は、高知県内の企業・研究所等の施設見学を中心に実習を行いました。高知県立牧野植物園では、日本の植物学の父と言われる牧野富太郎博士の業績の説明を受け、牧野博士のフィールド研究への心構えに参加者は皆、感銘を受けていました。また、特別講義として、東京海洋大学海洋科学部・教授の有元貴文先生の、持続的な漁業を目指した定置網の技術移転による漁村振興に関する講演を受講しました。講演後の質疑応答では多数の質問があり、伝統的かつ技術革新を続けながら確立された漁法とその海外での応用事例に、皆、高い関心を持った様子でした。

特別講義(講演者は東京海洋大学・有元貴文教授)
牧野植物園で標本作成の説明を受けている様子

プログラムの中盤は、工場や施設見学に加え、招聘学生が実際に体験するプログラムを組み込んで実習を行いました。高知大学農学部南国フィールド(農場)では、ハウス栽培技術を見学するとともに、ミカンの収穫や餅つきを体験しました。また、国指定史蹟天然記念物の鍾乳洞である龍河洞の体験ツアーに参加し、自然の造形を保護しながら観光に生かす様子を体感しました。

ミカンの収穫体験

土佐刃物や高知の製菓会社の工場等では、最新の機械による効率的な製造と、人間による最終的な仕上げや品質管理の過程の重要性について学習しました。室戸世界ジオパークでは、展示施設で室戸のユニークな地形の成り立ちを理解したのち、白亜紀から現在に至るまでに地球が動いた痕跡が残る海岸線を散策しました。あいにくの雨の中での見学になりましたが、黒潮を臨む壮大な景観に参加者は驚きの声を上げていました。

製菓会社工場の見学の様子

プログラムの後半は、高知の中山間地の実情や地域活性化の取組みを踏まえた実習を中心としました。300年以上の歴史を持つ高知の日曜市を見学し、買い物を楽しむだけでなく、出店者の高齢化や客足の減少などの課題を知り、日曜市の活性化に取り組む高知大学の学生の活動を見学しました。また、高知大学農学部嶺北フィールド(演習林)では、林業を中心とした中山間地の実情や、森林の管理技術に関する説明を受けた後、最先端の林業機械の操縦、および重要な林業作業の1つである枝打ちを体験しました。最初は慣れない山の斜面や梯子での作業に戸惑っていた参加者も、すぐに慣れて枝打ち作業を楽しんでいる様子でした。

枝打ち作業に取り組む参加者
日曜市の見学

高知での実習最終日には、高知大学名誉教授・諸岡慶昇先生による、技術移転や「緑の革命の功罪」に関する講演を受講した後、参加者と高知大学生が合同でプログラム全体を総括する報告会を行ないました。参加学生が実習で学んだことや、日本と参加国間の文化の違いなどについて議論しました。また、その日の夜に行われた送別会では、国境を越えて学生同士で夜中まで語り合い親睦を深めました。最後は涙ぐんでいる学生も多く見られました。

報告会での様子

翌日の日本滞在最終日は、早朝から東京へ移動して日本科学未来館を訪問し、最先端の科学技術を体験できる様々な展示に、参加者は興味津々で取り組んでいました。

日本科学未来館にて

今回、学生を招聘した3ヶ国4大学とは、以前から教育・研究両面での連携を図ってきましたが、今回のプログラムを通じて連携はさらに強固になり、参加学生も皆大きな刺激を受けたようでした。今後はさらに多くの国、大学に連携を呼びかけ、充実したプログラムを実施していきたいと思う。