2015年度 活動レポート 第122号:大阪市立大学

2015年度活動レポート(一般公募コース)第122号

化学研究ならびに化学教育推進の架け橋になる研究交流
シンガポールのKelvin Tan博士を招へい
大阪市立大学大学院理学研究科からの報告

大阪市立大学

シンガポールにおける科学教育の一大拠点であるHwa Chong InstitutionのSchool Scientistとして教育・研究に従事しているKelvin Tan 博士を、「さくらサイエンスプログラム」の支援を受けて、大阪市立大学大学院理学研究科に招へいし、錯体化学研究室において共同研究を行いました。

Kelvin Tan博士、理学研究科建物前

本プログラムでは、鉄錯体を触媒としたアルキンおよびアルケンのヒドロホスフィン化反応について研究を行いました。炭素-炭素不飽和結合へのヒドロホスフィン化反応は、副生成物を伴わない有機リン化合物の生成反応であり、注目を集めている反応です。

近年、受入れ担当者の研究室で鉄錯体を触媒とする反応を新規に開発しました。Kelvin Tan博士は、錯体化学、有機金属化学、触媒化学に興味を持っていたため、このヒドロホスフィン化反応をさらに発展させる研究を行いました。

受入れ担当者との2ショット
実験風景

ホスフィンの代わりにホスフィンボランを用いてアルキンへのヒドロホウ素化反応を鉄錯体触媒共存下で調べたところ、反応は起こっているものの複雑は反応が起こり生成物を同定するには至りませんでした。しかし、THF・ボランとアルキンとの反応により、B-H結合がアルキンに付加することを見出しました。

本プログラムで来日したKelvin Tan博士は研究意欲が高く、研究を大いに推進させました。

また、受入れ担当者の研究室の学生とのふれあいも十分行うことができ、学生は英語でのディスカッションに慣れ親しむ貴重な経験をすることができ、学生に国際化の重要性を伝えることができました。

実験についてディスカッション
実験ノート作成

研究室の仲間と

加えて、Tan博士はシンガポールで行っているInternational Science Youth Forum(主にアジアの高校生を各国から招待して科学の発展のための講演会や研究発表会を行う事業)に深く関与してきたので、高校生の教育、特に高校教育の国際化に関しての知識と経験が豊富です。

そのため本学が目指すグローバリゼーションに貴重な意見をいただくことができました。また、滞在中に大阪府立大学を訪問し、研究発表とそれに続く討論、ならびに化学教育についてのディスカッションを行いました。

Kelvin Tan博士の感想

I had a very enjoyable and enriching learning experience in this exchange program. Professor Nakazawa and his group made me feel very welcome and I learnt a lot of chemistry and experimental techniques from his group members.
This has been a wonderful experience and I hope I can return to Japan to share my experiences with, and encourage the University researchers, the High School teachers and students. Domo arigato gozaimasu JST, Professor Nakazawa and everyone in the Nakazawa group!

送迎会