2015年度活動レポート(一般公募コース)第119号
アジア各国の学生・研究者が日本の創薬や製薬ビジネスに触れる
九州大学からの報告
九州大学
さくらサイエンスプログラムの支援を受け、九州大学では9月6日~9月13日に、第2回Japan Medical Innovation Tourを開催しました。
アジア各国から参加者を公募し、厳正な審査によって選ばれた優秀な学生・若手研究者9名が来日しました。第2回目となった今回のツアーでは、医療イノベーションを推進する日本の製薬企業、アカデミアなど計10カ所を訪問し、世界をリードする日本の最先端技術に触れました。
未来を担うアジアの青少年が、更に医療イノベーションに関心を高め、近い将来、日本とアジアの医療イノベーション創出を担う優秀な人材として国際社会で貢献してくれることを願っています。
今回の参加者は8カ国(マレーシア、インドネシア、ミャンマー、シンガポール、ベトナム、フィリピン、台湾、香港)から全9名でした。ここでは訪問先10カ所のうち、6カ所をピックアップして写真と共にツアーでの様子をご紹介いたします。
まず、9月7日午前中は佐賀県の久光製薬鳥栖工場の見学からスタートしました。同社は「サロンパス」に代表される貼付剤を中心とした外用剤のリーディングカンパニーです。工場見学では、切れ端の再利用等、環境配慮や社会全体への恩恵を常に意識した生産プロセスになっている事を学び、またQ&Aセッションでは、製品の特長として、効率的な経皮吸収型ドラッグデリバリーシステムTDDS(Transdermal Drug Delivery System)であることを学びました。
午後は鳥栖から飯塚へ移動し、沢井製薬九州工場を訪れました。同社は、ジェネリック医薬品のリーディングカンパニーです。一般的な創薬開発については参加者の多くがある程度知識を持っていますが、ジェネリック医薬品の製造過程を見るのは初めて、という方がほとんどでした。
工場到着後にまず、製造部長、管理課マネージャーより工場概要の説明があり、製造工場紹介ビデオを鑑賞しました。いよいよ防護衣に着替え、薬の造粒プロセスやカプセル化、タブレット化、ラベリング、梱包などの過程を見学し、質疑応答も行われました。飯塚工場では多種の品目、剤型に対応している事、また、見やすい印字、パッケージなど、成分以外にも付加価値をつけたジェネリック医薬品を製造していることを知りました。
翌日は早朝に飛行機で徳島へ移動し、まず大鵬薬品北島工場を訪れました。北島工場は同社の主力製品である抗がん剤を製造している工場です。参加者たちは、清潔でモダンな会社のエントランス、最先端技術を用いての製造工程を見学し、非常に感動していました。敷地も広く大きな工場ですが、機械・コンピュータにより多くの作業がオートメーション化されており、働くスタッフの方の人数が50名程と少なく、とても効率的だということに驚いておりました。
午後は大塚製薬を訪問しました。ランチタイムには社員食堂を利用させていただき、日本の会社の雰囲気を味わうことができて、アジア各国からの参加者の皆さんも大変嬉しそうでした。 大塚製薬徳島工場エリアでは、生産本部や研究所が集まって活動しており、多品目の医薬品、機能性食品などを製造しています。まず、会社概要や主力商品などについてご説明いただき、その後、時間の許す限りラボや工場内の見学をさせていただきました。
9月9日の午後は、茨城県牛久市のツムラ漢方記念館を訪れました。ここでは、古代から現代までの漢方の歴史、その用途、実際に原料生薬から漢方薬になるまでの工程などを学びました。ツアー参加者は、漢方医学の盛んな東南アジア出身なので、今回のツアーではこちらの訪問を、特に楽しみにしていたようです。
また、薬草園では漢方薬になる植物を実際に触ったり、においを嗅いだりしました。工場では品質管理についてもお話を伺いました。「漢方医学と西洋医学の融合により世界で類のない最高の医療提供に貢献します」を企業使命とするツムラの精神を感じる盛りだくさんのプログラムで迎えていただき、大変有意義な時間になりました。
9月10日は午後から京都市の日本新薬(研究所)を訪れました。まず、会社(研究所)の概要とスケジュール説明を受けた後、早速、創薬研究と創薬を支える技術について研究員の方より講義していただきました。
まずは、「①創薬におけるコンピューターサイエンス」として、実際に参加者がPCを操作しながら、デモンストレーションを行いました。次に、「②創薬と医薬品の品質を支える分析技術」として、GC-MS、NMRなどを2号館実験室で見学しました。最後に、「③創薬におけるiPS細胞の利用、Qパッチ試験について」、安全性薬理研究員の方からご説明いただきました。
この後、京都駅から九州への新幹線の時間が迫っていたのですが、ギリギリまで質疑応答も活発に行われ、アジアからの参加者の皆さんにとっては大変有意義な時間になったことと思います。